飛び入学とは
飛び入学とは、勉強やスポーツ、芸術などで優れた成績を残した生徒が、高校卒業を待たずに大学へ入学する制度のことです。文部科学省は制度について、以下のように位置づけています。
「飛び入学は、一人一人の能力・適性に応じた教育を進める観点から特定の分野で特に優れた資質を有する者に早期に大学入学の機会を与え、その才能の一層の伸長を図ろうとする制度である」文部科学省「学校教育法施行規則の一部改正等について(通知)」2001年12月27日付け、各国公私立大学長等宛てから引用
つまり、優れた能力を持つ人が、より専門的な学習環境が整った大学などで早く学び始めることで、さらに才能を伸ばすことを目的としています。
2021年5月時点で累計144人
「飛び入学」制度は1998年から始まり、22年度に実施しているのは千葉大学や名城大学など、国公私立8大学です。制度を利用して飛び入学した人数は、2021年5月時点で累計144人となっています。
制度を実施している8大学名、実施学部、制度導入年度はこちら。
- 千葉大学(国立)、文学部・理学部・工学部・園芸学部、1998年度
- 名城大学(私立)、理工学部、2001年度
- エリザベト音楽大学(私立)、音楽学部、2005年度
- 会津大学(公立)、コンピュータ理工学部、2006年度
- 日本体育大学(私立)、体育学部、2014年度
- 東京芸術大学(国立)、音楽学部、2016年度
- 京都大学(国立)、医学部、2016年度
- 桐朋学園大学(私立)、音楽学部、2019年度
※文科省調べ。2021年度入試における飛び入学実施大学
高等学校卒業程度認定審査制度とは
文部科学省が2022年4月1日に設けた「高等学校卒業程度認定審査制度」とは、飛び入学者が大学を中退した場合、一定の単位を修得していれば、高校を卒業したことと「同等以上の学力」があると文部科学大臣が認定する仕組みです。
制度創設の背景
飛び入学者は高校を卒業せずに大学へ入学するため、この審査制度が創設される以前は、大学を中退すると最終学歴は「中学卒」でした。文部科学省はこうした状況について「就職や資格試験等の受験において困難が生じるとともに、飛び入学の活用が促進されない一因ともなっている」とし、22年4月から制度を創設することとしました。
高等学校卒業程度認定審査制度の概要
高等学校卒業程度認定審査制度の概要をご紹介します。ポイントは以下の3点です。
認定の基準となるのは①高校で50単位以上を修得していること(高校以外の学校種の場合には、高校における50単位以上の修得に相当する学修の成果を有すること)②大学で16単位以上を修得していること③大学で修得した単位の分野が著しく偏っていないこと、となります。
高校卒程度と認定されるためには、飛び入学者は上記の条件を満たした上で文部科学省に申請を行います。申請した内容は高校や大学関係者が委員を務める審査委員会に諮られ、その結果を踏まえて文部科学大臣が認定を行います。認定を受けた飛び入学者には「高等学校卒業程度認定審査合格者」として合格証が授与されます。
飛び入学者の進路(千葉大学の例)
1998年から飛び入学制度を導入し、最も多くの入学者を受け入れてきた千葉大学の真鍋佳嗣・先進科学センター長は、今回の制度創設について「本人が飛び入学を希望していても、保護者が『もし中退したら学歴が中学卒になる』と、ためらうケースも想定されていた。そうした不安の解消につながるのではないか」と期待を寄せています。
同大学によると、2022年3月末時点で飛び入学した卒業生の総数は82人にのぼるといいます。卒業生の進路として進学を選ぶ学生が多く、千葉大学大学院への進学(29人)、東京大学大学院20人、京都大学大学院7人など。就職を選んだ卒業生は11人でした。
真鍋センター長は「飛び入学した学生からは『受験勉強のための時間を、研究に充てることができた』という話を聞く。大学も学生の個別の能力に応じた授業を用意しており、飛び入学者がいち早く研究室などで専門的な学問に触れることはプラスになると考えている。日本の教育制度は年齢や学年を基本としているため、飛び入学が『特殊なケース』と受け取られがちだが、学生の能力に適切な教育を与えるものであり、海外では珍しいものでもない。今回の制度創設で「中卒問題」は解消されたが、飛び入学という制度そのものの認知度がまだ低い点が課題だと思う。これを機に認知が広がっていくことを期待しています」と話しています。