ミニテストをテレビゲーム感覚で
2月中旬、中学1年生の英語の授業を見学した。教室に張られたスクリーンには、英単語の穴埋め問題や読解力を問う○×クイズが映し出されている。この日の授業内容の理解度を測るためのミニテストだ。生徒たちは、手元のタブレットに表示された選択肢から、答えを選んでいく。スクリーンに正解が表示されると、「あぁ!」と、悔しそうな声が教室に響いた。
テストには生徒たちが任意のハンドルネームで参加し、問題に正解するとスクリーン上で得点が加算される。全ての問題が終わると1位から3位が発表された。優勝した生徒は「初めて1位になれた。タブレットを使った授業は楽しいから好きです」と、笑顔で語っていた。
授業を担当する小野澤信一先生は「ゲーム形式なら、正解がわからなくても全員が挑戦できる。『間違えても良いから挑戦する』という姿勢が英語学習には必要。そのためにICTを積極的に活用していきたい」。
小野澤先生の授業はスクリーンとタブレットを中心に展開される。授業中は「日本語禁止」がルールだが、単語や文章読解の際には自作のアニメーションで理解を促す。「今日の授業内容なら2時間ほどで作れる。生徒たちが『楽しい』と思ってくれるなら、積極的にやり続けたい」。
宿題も評価も管理 負担減る
同校は、校内全域にWi-Fiを整備し、生徒が所有するスマートフォンやパソコンを校内に持ち込む「BYOD」を認めることで、GIGA端末が配備されていない高校生にもICTを活用した授業を実施できるようにした。
こうした環境が整えたことで、タブレットなどの活用方法は、授業内のゲームやアニメーションといったデジタル教材の幅にとどまらない。例えば、生徒がスマートフォンに英語を吹き込めば、クラスで同時にスピーキングのテストを行うことができる。生徒が吹き込んだ音源や動画はクラウド上にアップロードされ、それを先生が確認する。「40人クラスでスピーキングテストを実施すると、1人3分でも120分かかってしまう。この方法なら3分で終わります」(小野澤先生)。このほか、宿題の提出状況や評価も端末で一括管理することで教員の負担を減らすことが出来たという。
オンラインで生徒の意見を集めることもできるといい、「完全に匿名かつリアルタイムで、生徒に授業の感想を聞くことができる。そうすれば『つまらない』『嫌だ』といった生徒のネガティブな声も拾うことができ、先生が成長するヒントになる」と小野澤先生。多い時には授業中に3回アンケートを採ったこともあるという。
「始めることに意味がある」
同校がデジタル化に転換した大きなきっかけは、2020年の新型コロナウイルス流行による一斉休校だった。「休校中に何が出来るか。先生たちの中にも戸惑いはあった」と野村公郎・統括校長。オンライン授業についても、教員からは「ITに関する知識が無い。身に付けてから始めたい」という要望も寄せられたという。だが「120%のケーキをクリスマスの翌日に出しても意味が無い。80%の出来栄えでも始めることに意味がある」と、野村校