生徒が自ら学ぶテーマを決め、調べながら理解を深めて行く「探究学習」。文部科学省が定めた新学習指導要領でも重要なポイントとされ、2022年度からは高校で「総合的な探究の時間」など探究の名が付いた科目が本格的にスタートします。どのような取り組みなのでしょうか。15年度から独自に探究学習を進めてきた東京都千代田区の神田女学園中学校高等学校を訪ねました。※記事中に登場する生徒の学年は21年度のものです。

3月11日、神田女学園の講堂で生徒たちの探究学習の成果を表彰する同校のイベント「NCL AWARDS(ニコル・アワード)」が開催された。生徒がそれぞれ1年間取り組んで来た探究の成果を教員たちが審査し、プレゼン部門と論文執筆部門のそれぞれで「アイデア賞」や「ユニーク賞」など、16人を表彰した。

プレゼン部門の最優秀賞はフェアトレード

「プレゼン部門の最優秀NCL(ニコル)賞は、王瑞雪(おう・すいゆき)さん!」。探究の授業を担当する池田幸代先生が名前を呼ぶと、高校1年の王さんが壇上に上がり、受賞したプレゼンを披露した。

探究学習の成果を発表する生徒の写真
探究学習の成果を発表する王瑞雪さん

テーマは「なぜ国籍が違うとフェアトレード※注の関心度も違うのか」。テーマを選んだきっかけは「チョコレートが好きで、カカオの実がフェアトレードのものだったから」という。中国出身の王さんは「国籍が違ってもフェアトレードの関心度には差が出ないはずだ」という仮説を立て、調査を始めた。
※注 フェアトレード=「公平な貿易」を指す。開発途上国の農産物などを購入するときに適正な価格で取引を行い、生産者・労働者の自立を支援する仕組み。

最初はインターネットなどでフェアトレードについての知識を深めることから始め、冬休みにはインドと英国のフェアトレードの関心度の違いについて書かれた英語論文を読みこんだ。そしてインドでは生産者側の目線で関心が高く、英国では消費者側の目線で関心が高いなど、歴史や文化によって関心度が異なるという結果が出たことを知ったという。

論文の内容に刺激を受けた王さんは、「日本と中国では違いはあるのだろうか」という疑問を持ち、オンラインアンケートを実施。同校の生徒54人と、中国のサイトで募った中国人234人から回答を集めた。

王さんの調査では、中国人の方がフェアトレードに関心が高いという結果がまとまったという。プレゼンでは「日本は民主主義で、中国は共産主義。調和を重視する中国との文化の違いが結果に表れたのかもしれない」と考察を語り、最後は「今回はアンケートの母数が少なかったので、さらに数を増やして差が生じた理由も詳しく調べていきたい」と、今後の目標で締めた。

プレゼン部門で最優秀ニコル賞を受けた王瑞雪さん
プレゼン部門で最優秀NCL賞を受けた王瑞雪さん

取り組みから7年 生徒どうし教え合う

同校が探究学習の導入を検討し始めたのは2013年度のこと。グローバル教育に特化したクラスを新設する際の議論のなかで、英語教育以外にも、社会課題をテーマに生徒自らが学びを深めて行く授業の必要性に気づいたという。