寺子屋朝日for Teachersでは5月から、「ともに考える 私たちの学校プロジェクト」を始めました。東京学芸大学などの「未来の学校みんなで創(つく)ろう。PROJECT」がまとめた学校改革の提言を基に、公募に応じた全国の先生たちがありたい学校の姿についてオンラインで話し合い、より豊かな「提言ver.2」をつくっていくものです。議論に合わせ、プロジェクトに関わる方々が書きつないでいくリレーコラムは2回目の今回、小学校に長年勤めた日本女子大学非常勤講師の根本裕美さんにお願いしました。

根本裕美さん(ねもと ひろみ 日本女子大学家政学部児童学科非常勤講師)
東京都内の公立小学校で、研究主任、教務主幹、指導教諭などとして勤務。生活科、総合的な学習の時間に長年関心を持ち、2008年度には小学校学習指導要領解説「生活」編協力者を務めた。23年3月に東京学芸大学大学院教育支援協働実践開発修了。

「私の好きなもの」

この言葉を考えていたら、小学校担任だった時代にずっと好きだった教科「生活科」が頭の中に浮かんだ。低学年のみの教科であり、できてから三十数年という、教科としては歴史の浅い「生活科」は、その内実を知らない人がまだまだ多い。

子どもが身近な人や物などと関わり、活動を通して対象への認識を深め、その過程で自分の成長に気付いて自立への道をたどるという目標をもつ「生活科」を子どもたちと創(つく)ることは、本当に面白かった。目の前の子供たちにぴったり合うようにと授業を描いていくのは、まさに「好きに、挑む」ことだったのではないか、と今改めて思う。

「生活科」で子どもが関わる対象は、家庭や地域、生き物や自然など幅広いが、一番初めに出合う対象は「学校」である。1年生に入学し、期待と不安の中で、学校でやってみたいこと、行ってみたいところなどを先生や友達に伝え、探検したり、学校で働いたり関わったりしている様々な人と出会ったりして、「学校」を自分なりに理解して好きになっていく。

やってみたいこと、行ってみたいところを繰り返し探検する活動は、やがてそれを誰かに伝えたいという表現活動につながっていく。そして、活動が一段落し、やってきたことを写真や作品を使って振り返る中で、「この勉強で何がよかったかな」と問いかけた時に、入学して2カ月の1年生から、「せいかつかをやるとがっこうがすきになる」という答えが返ってきたことは深く心に残っている。

「がっこうがすき」 全ての子が思えるように

「がっこうがすき」。このプロジェクトを通して、全ての子どもがそう思える学校に一歩でも近づきたい。

現在は、幼児教育を学ぶ大学生に「生活科」の講義をしているが、その学びを体感するために「大学探検」をグループで行う。小学1年生と異なり、通ってきた大学ではあるが、学内にはあまりなじみのない場所や様々な職の人々がいることに気付く。

インタビューをし、気付いたことをまとめる中で、例えば、庭園が保護者や卒業生の寄付や協力によってつくられたものであること、警備をしてくれている人に24時間守られていること、環境保護など新しい取り組みを大学がし続けていることなどを知り、「前よりこの大学が好きになりました」という学生は驚くほど多い。また、インタビュー協力のお礼を伝えに行った警備の方からは「知ってくれてうれしかった」という言葉もいただいた。

6歳と20歳。

年齢も経験も全く異なるが、学校を知り、そこに関わる人と実際に触れあうことで「子ども」は「学校が好き」になる。そして、「子ども」を取り巻くすべての人が、学校で「子ども」に関わることにより、学校は身近な可能性がたくさんあるフィールドであることを思い出し、共に価値を高めていくようになってほしいと切に願う。

価値をつくり、大人も学びを更新する学校

私たちのグループが、討議する中心は「学校を開く」ということである。

  • 空間を社会に開いていくことで新しい価値をつくる
  • 子どもだけでなく、大人も含めた地域全体が学びの場として学校を共有し自分の学びも更新する

そんな「学校」づくりを目指していきたい。グループメンバーは、現役の教員の他に、幼児教育に関わる人、事務室から教育を考えている人、広く様々な地域の教育を見てきた人…とバックグラウンドも様々である。

「幼児期から地域に関わる活動を考えたら?」「学校に関わる人がすべて子どもと直接接点をもつようしたら?」「組織からもっと連携できるような道はないだろうか?」「関わりを生む空間も工夫できないか?」

1回目の座談会では、「開かれた学校」をつくるための、それぞれの夢や思い、やりたいことがあふれた。次回以降、夢と現実のギャップを確かめながら、誰にとっても大切な「未来の学校」を探っていきたい。