GIGAスクール構想で導入された端末を生徒がどう使うかをめぐり、新潟市立関屋中学校(山田聡校長)が作った生徒指導のガイドラインと、問題行為のレベルに応じた対策の基準(ルーブリック)について、先にお伝えしました。担当の先生が「ルールや校則とは違うもの」と言うガイドラインと基準は、なぜ必要とされ、作られるまでにどんな経過をたどったのでしょうか。後編では、生徒や保護者の受け止めとともに、作成に至った背景をお伝えします。

 

GIGAスクール構想が始まり、生徒が端末の扱いに慣れてくると、関屋中でもさまざまな問題が起きるようになった。 

エアドロップで手紙、ゲームも

たとえば、同校が配備したiPadなどApple社の製品に搭載されているAirDrop(エアドロップ)を使ったデータのやりとり。アップルのデバイス同士を直接つなぐため、動画など重いデータも高速で送受信できる。撮影した写真に落書きしたものを友だちに送ったり、授業中に手紙を回したり。受信しない設定にしておかないと、知らないうちに送られてしまうこともある。

他人の端末への嫌がらせもあった。立ち上げに使うパスコードは、間違えると一定の時間、ロックがかかる。何回も失敗するとロックがかかる時間が長くなり、最終的には教育委員会に持ち込まないと解除できなくなる。そんな対応にGIGAスクール構想担当の佐藤可奈子、古澤康弘両先生の時間は奪われた。ウェブ上のゲームのほか、プログラミングの学習アプリに付いてくるサンプルゲームを楽しむ目的でアプリを使う生徒も現れた。ネット上の文芸作品を自作のように装って提出する剽窃(ひょうせつ)も起きた。

関屋中校舎
新潟市立関屋中の校舎

そんな中、生徒の端末利用に対する教職員の考え方はばらばらだった。「今までネットにつながるものは持ってくるなと指導していたのに、なぜトラブルの元を導入するのか」と端末不要論を唱える先生もいた。「最初は私たち、教職員に怒られる係でした」と佐藤先生は振り返る。生徒が不適切な使い方をした時、「使用禁止だ」と端末を取り上げる先生、見過ごす先生、とうとうと説明を始める先生……。生徒への指導は大いにぶれた。

「このままではGIGAスクールは崩壊する」。佐藤先生は、まず自力で今のガイドラインと基準の元になるものを作ったが、より指導色の濃いものだった。米の教育事情に詳しい知人にはこう指摘された。「指導一辺倒では子どもに通じない。必要なのは支援」。上から押しつけたルールだと生徒に受け止められないために、どうすべきか――。自作のガイドラインと基準はひとまず封印することにした。