新潟市中央区の市立関屋中学校は昨年12月、「学習用iPadに関わる生徒指導ガイドライン」と「GIGAスクール『支援』と『指導』の基準」(ルーブリック)を作った。生徒や保護者ら関係者は、インターネット上で閲覧できるほか、それぞれA4版にプリントアウトしたものも配られた。生徒も作成に関わるように、国語科教諭の佐藤可奈子先生(49)がファシリテーション(かじ取り)して作り上げ、技術家庭科教諭でICT担当の古澤康弘先生(47)がバックアップした。
罰よりも「考えさせる」軸に
ガイドラインでは、生徒指導の基本方針として、「生徒自身に考えさせる指導」と「当たり前の生活の指導」の二本柱を打ち出したのが特徴だ。「生徒自身に考えさせる指導」とは、「してはいけない」から「どうすればいいか」への転換を指す。デジタル機器の危うさを強調し正解を教える従来の情報モラル教育から脱し、情報を精査してさまざまな解釈ができることを経験したり、自分の行動を自分で選んで責任を認識できるよう学んだりする「デジタルシチズンシップ教育」をベースに、自己調整能力を身につけることを目指す。「当たり前の生活の指導」では、法律を守ること、高い人権意識が必要なことを学ぶ。
デジタルシチズンシップは、「情報技術の利用における適切で責任ある行動規範」と定義される。要は、デジタル技術の利用を通じ、責任ある市民として社会に積極的に参加するための知識や能力のことだ。
今年度上半期に校内で起きた問題行為を仕分けすると、人権侵害のおそれがある行為(6件)、ゲームをするなどマナー・モラル違反(22件)といったデジタルシチズンシップに関わるもの(Ⅱ類)は28件に上り、法律違反など法律や契約に関わるもの(Ⅰ類)も5件あった。これを踏まえ、デジタルシチズンシップに関する行為は、「生徒自身に考えさせる指導」でアプローチし、自ら解決できるよう支援と指導を組み合わせて、深刻化しないようにする。法律や契約に関わる行為の場合は、法令順守を大前提とした当たり前の生活指導をして自己修正を促す、としている。
42の問題行為を4段階で例示
そうした問題行為への対応方法が「『支援』と『指導』の基準」で例示されている。まず問題行為の軽重の程度を、レベル1(自分自身が困る、基本が身についていない、相手に迷惑をかける)から、レベル4(目的外使用、犯罪行為、人権侵害に該当)まで4段階に分けた。レベル1、2は、ガイドラインで言うデジタルシチズンシップに関する行為(Ⅱ類)に、レベル3、4は法律や契約に関する行為(Ⅰ類)に該当する。
そのうえで、42種類の代表的な行為を並べ、それぞれどのレベルに当たるかを一覧にした。「アカウント・パスワード忘れ」はレベル1、「授業中のゲーム」はレベル2(目的外使用 他人への迷惑の範囲が広がり人間関係や信頼関係を損なう心配がある)、「他人の姿の勝手な撮影、一部の関係者への送信、拡散」はレベル3(目的外使用、意図的な契約違反、人権侵害のおそれがある、授業を妨害する)、「インターネットによるいじめ 中傷 差別 脅し 嘲(あざけ)り」はレベル4、という具合だ。