ウェブサイトのURLなどの最後に付いている「jp」は日本のことだと想像がつくけれど、「com」など国ではない言葉が付くこともあるのはなぜ? URLとドメイン名って、同じものじゃないの? インターネットがあることが当たり前になる中、JPドメイン名の登録管理などを行う日本レジストリサービス(JPRS、東京都千代田区)は、そんな意外に知られていないネットの基本的な仕組みが学べるサイトを開設しました。中学や高校を中心に、自習にもグループワークにも利用できそうです。

ポン太のインターネット教室」は5章からなる。「インターネットの世界ってどうなっているの?」「URLとドメイン名って同じじゃないの?」「DNS(ドメインネームシステム)を学ぼう!」の1~3章を5月に開設し、「日本のドメイン名『.jp』のヒミツ」「みんなで動かすインターネット」の4、5章を6月末に追加した。

ポン太という男の子と猫のピコ丸というキャラクターが登場し、1章ではインターネットの前身の一つのARPANET(アーパネット)」が1969年に米国で運用され始めたことや、やりとりされる情報量が年々増え続けていること、2章ではサイトのURLやメールアドレスの核の部分がドメイン名であることなどを紹介している。たとえば、URLが「https://jprs.jp」なら、そのうち「jprs.jp」がドメイン名となる。

各章の末尾にはチェックテストがあり、それぞれの章の内容をどれくらい理解できたか確認しながら、自分のペースで学習を進められるのも特徴だ。

チェックテストの画面
チェックテストの結果画面の例

ドメイン名の一番右側のブロックはトップレベルドメイン(TLD)と呼ばれ、「.jp」など国や地域に割り当てられるものはccTLD、それによらないものはgTLDと呼ばれることは、JPRSの専門家がポン太とピコ丸に向けてわかりやすく解説する動画仕立てとなっている。こうした10分程度の動画は計4本を用意した。

※ccはcountry code(カントリーコード)、gはgeneric(ジェネリック)の略。

「.」(ドット)で区切ったブロックごとに階層化されたドメイン名を右から左にたどることで、インターネット上の住所の役割を担うIPアドレスを特定していくDNSについては、2本の動画を使って詳しく説明している。

小中学校で昨年度、GIGAスクール構想が始まったことを受け、普段何げなく使っているインターネットの仕組みがどんなふうになっていて、基盤を支えている人がいることに関心を持ってもらおうと制作したという。同社広報宣伝室の横井裕一室長は「生徒一人ひとりが手を動かして体験しながら、授業の中で楽しんで学んでもらえることを意識して作りました」と話す。

「ポン太のインターネット教室」の動画のひとこま
「ポン太のインターネット教室」の動画のひとこま。ポン太と猫のピコ丸

サイトの基になっているのは、全国の教育機関を対象に2010年から無償配布を続けるマンガ小冊子「ポン太のネットの大冒険~楽しくわかるインターネットのしくみ~」だ。ネットの世界に迷い込んだポン太が、ドメイン名をたよりにバナナを持ち主に届ける旅を通して、インターネットの基本的な仕組みを紹介している。若年層にインターネットの正しい知識を身につけてもらう狙いで作り、過去12年間で中学校や高校を中心に約1800校に約33万冊を配布してきた。

インターネットをめぐる変化に合わせ、内容も少しずつ変えている。たとえば、目的のウェブサイトに行くための通信手段である「http」と「https」の違いを説明するページは、当初はなかった。第三者に見られないよう情報を暗号化し、個人情報を盗まれたり書き換えられたりするのを防ぐために登場した「https」の利用が一般的になってきたことを受け、17年のリニューアルで加えたという。

GIGAスクール構想のスタートなどと相まって情報教育が盛んになってきたせいか、小冊子は小学校にも配布実績があるほか、教育委員会や大学からも配布希望が寄せられ、企業からは「社内研修で使いたい」といった声も届いている。

そんな中、同社は5月、中学、高校の情報教育担当教諭の計300人を対象に実施したインターネット教育に関する調査結果を発表した。インターネットの仕組みを授業で「ほとんど教えていない」「全く教えていない」という人は合わせて32.6%にのぼり、5年前の17年の調査より14.1㌽増えていた。ドメイン名についても「ほとんど」「全く」教えていない人は44.7%で、5年前を9.1㌽上回った。

一方、情報教育の授業を「自信を持って教えられている」のは31.3%で、5年前より7.1㌽下がっていた。

小冊子「ポン太のネットの大冒険」
無償配布を続けて13年目となった小冊子「ポン太のネットの大冒険」

情報教育が5年前に比べ、少なくとも低調になっているとは思えないが、なぜこんな結果が出たのか。同社広報宣伝室クリエイティブGグループリーダー、渡邊千裕さんは「あくまで推定ですが」としたうえで、「情報教育で扱う内容が広がり、プログラミングやプレゼンテーションなども行うようになった。インターネットはつながるのが当たり前になり、ドメインなどそれを支える基盤のことまで手が回らなくなった先生が増えているのかもしれません」と話す。

日本レジストリサービスは、「.jp」のつくJPドメイン名の登録管理とDNSの運用を中心としたサービスをする会社として、2000年12月に設立された。ウェブサイトやメールアドレスのほか、スマートフォンなどでのアプリの通信にも使われるJPドメイン名の登録数は、今年6月1日時点で170万件を突破した。

私用メールアドレスでは近年、携帯電話会社のキャリアメールがあまり使われなくなった一方、企業が登記時に「co.jp」のドメイン名を登録するなどのケースは堅調に伸びているという。「目立たないけれど、インターネットを支えている企業があるということを世の中に知ってもらえたらありがたい」と横井室長はそう話す。

マンガ小冊子は、こちらのリンクからPDF形式で閲覧やダウンロードができる。英語版「Ponta’s Great Adventure in the Network」、中国語(繁体字)版「彭太的網路大冒險」も用意している。