――クラウドのデータセンターはどこにあるのでしょうか。
よく知られているのは、アイルランドのダブリンにあるGoogle(グーグル)のデータセンターで、寒冷地にあります。コンピューターは熱を出すくせに熱に弱い特徴があり、冷却が最大の課題ですが、雨ざらしなのでよく冷えるそうです。Microsoft(マイクロソフト)のデータセンターには、コンテナのようなものに入れ、海中に沈めて冷やすところもあります。いずれも自然環境の冷却効果を考えた方法です。使っているうちに故障機が増えて稼働率が落ちてもその都度修理せず、回し続けることもある。引き揚げて交換するとしても何年か後です。ある仕事を1台だけでするのではなく、故障したらすぐ別のコンピューターにスイッチできるよう分散させ、並行して進めているからそれができるのです。
たくさんの仕事を引き受け、大量のコンピューターを動かすことで規模の経済が働き、貸し出す料金は安くできる。利用者も、みんなでコンピューターの能力をシェアすることで無駄なく運用できるわけです。
「ガバメント」も海外勢採用
これに対して、日本のクラウド事業者の多くは1台1台をきれいにメンテナンスして使っています。しかもお台場など都心の一等地にあったりする。何かあれば駆け付けるという発想です。いいこともあるでしょうが、値段の面では海外勢に太刀打ちできません。ガバメントクラウド(日本政府が用意するクラウド環境)の先行事業で10月に選ばれたのも、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と、グーグル・クラウド・プラットフォーム(GCP)の海外勢2社でした。
――日本企業もグローバル化に対応しているのかと思っていました。
リアルの世界では、ディズニーランドがどれだけ人気でも、お客さんがいっぱいになったらそれ以上は入れないから、他のテーマパークも人を集められる。でもインターネットは勝者が一人勝ちする世界で、クラウドは規模が正義のようなところがあります。サーバーはいくらでも増やせるし、ネットワークも拡充できる。いっぱいだからこれ以上受け入れられない、ということはありません。数十億人を相手に商売しているGAFAなどと比べると、1億人が相手の日本企業はどうしても高コストになるし、先を読むために活用できるデータの数でも太刀打ちできません。
クラウドで一番手をつけやすいのは、写真や大事なファイルを預かるストレージサービスで、これは日本企業もたくさん参入しています。でも本筋はあくまでもコンピューターが生み出す計算能力を使い、お客さんに代わってアプリを動かし、結果だけをお返しするというサービスです。
――クラウドはGIGAスクール構想で1人1台端末を使う前提とされています。学校教育とクラウドの親和性は。