「GIGAスクール構想」初年度も、残すところあと4カ月余りとなりました。子ども1人1台ずつ配備された端末をはじめとするICT(情報通信技術)の活用は全国のたくさんの学校で進められていると思いますが、校内だけでなく端末を家庭に持ち帰って活用する、しかも日常的に、となると、どうでしょうか。持ち帰り活用の意義とは――。東京都内のある中学校では、端末は授業を家庭学習へとつなぐ役割を果たしていました。   

 

東京都墨田区の区立寺島中学校。1人1台のiPadを使った研究授業が7月、各学年と特別支援学級で行われた。2年生は電気を扱う理科の実験が対象となった。一つめの実験は、2個の豆電球が点灯している直列つなぎの回路と並列つなぎの回路からそれぞれ1個ずつ電球を外し、電球が消えるか確かめる。二つめは、スイッチを使って並列つなぎの2個の電球を1個ずつつけたり消したりできる回路をつくる、というものだ。 

理科の実験にiPad活用

担当の佐藤圭介先生(36)はあらかじめ生徒たちに対し、実験結果を予測したり回路図を描いたりするよう求めていた。「ロイロノート・スクール」と呼ばれる授業向けのアプリを使い、それぞれの端末から先生に提出するまでがミッションだ。それぞれのタイミングで提出を終えた生徒たちは、端末を携えて理科室に集まった。

実験1
一つめの実験では、直列つなぎと並列つなぎの豆電球から、それぞれ一つ外したときにどうなるかを比べた

直列つなぎの場合、1個を外すともう1個は消えるが、並列つなぎだともう1個はついたまま。端末と大型モニターで共有したみんなの解答の多くは、そのように答えていた。回路図のほうは、まず自分の回路図を班のメンバーに送り、友だちがどんなふうに考えたか確かめた後、佐藤先生が班ごとの解答を大型画面に映し出した。スイッチを電池のそばに描いたり、電球の近くにしたり、回路の外に置いたものも。佐藤先生は「違いを見て、どのやり方がいいのか考えながら実験してみてください」と促した。

直列つなぎと並列つなぎの2個の電球から1個ずつを外す一つめの実験はどの班も順調だった。だがスイッチを使う二つめは、1個ずつつけたり消したりする仕組み作りに多くの班が苦しんでいる様子。「あ、できたかも」「こっちを消したいんだよね」。端末に表示された他の班の人の回路図も横目に見ながら試行錯誤した。 

実験2
ふたつめの実験では、スイッチを使って二つの豆電球をつけたり消したりできる回路を考えた

「人と意見比べられる」

二つ目の実験まで終えた班は、電灯のスイッチが2カ所にある回路をつくる実験にも取り組んだ。畑茉結子(まゆこ)さん(14)の班は、二つめまでスムーズにできたが、三つめは正解までたどりつけなかった。「スイッチをオフにしても電球が消えない問題が解消できなかった」。授業で端末を使うメリットって何だろう。そう尋ねると、「紙だと、だれかが発表しないと人と意見を比べるのが難しかった。今はロイロノートで提出すれば比較することができます」と答えた。

実験3
三つめの実験。電灯のスイッチが階段の上下2カ所にある回路をどう作るか考えた

佐藤先生は昨年度、寺島中のICTリーダーを務めた。1人1台端末の配備に先立って昨年度の夏休み中に取り組んだのが、ロイロノートを使うためのクラス設定などの準備だった。学年、教科、担当教員ごとにフォルダーを作る必要があったためだ。自身も昨年度、ロイロノートの使い方を学びながら授業で効果的に使えそうな機会を見極めてコンピューター室のパソコンで試し、徐々に使い方を身につけていったという。 

PDF送り 書き写しは家で

ロイロノートでは、資料や課題を生徒の端末に送ることができる。「ノートに書き写してほしいことはPDFで全員に送り、授業中に書ききれなければ宿題にする」と佐藤先生。板書にあたるPDFが届けば、欠席者にとっても理解の助けになる、との思いがある。かつては板書の書き写しが授業の半分くらいを占めていたが、「その時間、もったいないでしょう。書くのは家でもできる」。今は書き写しを5分くらいにして、その分生徒間のコミュニケーションや、考えて判断したり発表したりする時間を増やしている。

今年1月に1人1台の端末が導入された同校では、習熟期間を置いた後、4月以降は毎日、生徒が持ち帰って家庭学習に利用している。そこでは、ロイロノートのほか、ベネッセのソフト「ミライシード」のドリル形式の教材も使う。5教科を曜日で割り振り、学年ごとに担当の先生が範囲を決めて出題する。進捗状況がずれていれば、全クラス終わっている内容を出すようにするという。

佐藤先生の授業
中学2年生の理科の授業。佐藤圭介先生は電気を扱う実験にiPadを利用した=東京都墨田区の寺島中学校

先生たちからは、だれがどの問題で間違えたか、何時にやったかなども把握できる。やってこない生徒はほとんどいないが、正解数などに応じてもらえるポイント集めに躍起になり、同じ問題ばかり何度も解く子がいるのが先生たちにはちょっと気がかりだ。 

学習習慣「身についた」

2年の渡辺優太さん(14)は、「ミライシードをやることで学習の習慣がついたと思う」と話す。所属するバドミントン部の活動日は幸い週2回ほど。「練習がある日でも夕方6時ごろに帰ってきてから十分できる分量なので、負担に感じることはない」と話す。

田中茂和校長は「iPadなどのデジタル機器を使うことで生徒のプレゼンテーション能力は確実に伸びるだろう。でも、今の子どもたちは長い文章を読むのが苦手と言われている。時に図書館で本を読んで調べることも必要ではないか」と話す。