愛知県立芸術大学
広大な自然の中で芸術的感性を磨く
愛知県長久手市の広大な自然豊かな森の中にある総合芸術大学、愛知県立芸術大学。初代学長・上野直昭氏は「この山に入るものに、先ず人界を忘れることをすすめる。人間臭を去ることを求める」という言葉を残したという。プレゼンテーションを行った作曲専攻作曲コースの成本理香教授は、「自然の中に身を置き、ひたすら芸術と向き合い、感性を磨く。そんな日々を過ごせることは、とても贅沢な経験だと思いませんか」と語った。
同大音楽学部には、作曲専攻(作曲コース・音楽学コース)、声楽専攻、器楽専攻(ピアノコース・弦楽器コース・管打楽器コース)の6つのコースがあり、少人数制教育を行っている。3年次または4年次に出演する学内演奏会、成績優秀者が出演する定期演奏会、卒業演奏会など、ステージでの演奏を経験する機会は多い。
また、年1、2回開催される特別講座では、CMディレクターや楽器修理の職人など、コースごとに多彩な分野のプロフェッショナルを招聘。幅広い視野で学びを深める機会を作っている。
愛知県立芸術大学ならではのユニークな取り組みもある。例えば、美術学部デザイン・工芸科の陶磁専攻芸術表現コースと音楽学部作曲専攻作曲コースによる合同授業。2023年度は両コースの混合でグループを作り、本から得たインスピレーションを元に制作・作曲を行った。成本教授は「ジャンルを超えて交流し、芸術と向き合えるのは、本学らしい魅力だと思います」 と強調した。
プレゼンテーションを締めくくったのは、弦楽器コースの白石禮子教授と桐山建志教授による演奏。モーツァルト作曲「バイオリンとビオラのための二重奏曲KV423」より第1楽章、プロコフィエフ作曲「2本のバイオリンのためのソナタOp.56」より第2楽章が披露され、聴衆は美しく豊かな音色に聞き入っていた。
昭和音楽大学・昭和音楽大学短期大学部
「声」を専門にした新たなコースもスタート
声楽家の下八川圭祐氏が、総合的なオペラ教育を目指して設立した声楽研究所をルーツとする昭和音楽大学。
80年以上にわたり本格的な声楽教育を行ってきた同大に、今年度新設されたのが、「声とことばの創造表現コース」だ。声の出し方・呼吸や表現方法をはじめ、詩・俳句・戯曲など「日本語の創作と朗読」といった授業を通じて、音楽業界やエンターテインメント、放送業界などで活躍できる人材の育成を目指している。
新コース設立により、「音楽芸術表現学科」は、作曲、器楽、声楽、ジャズ、ポップ&ロックミュージックなど計16コースに。アートマネジメント、舞台スタッフなど6コースがある「音楽芸術運営学科」と合わせて、22もの専門的なコースから選択することができるようになった。
神奈川県川崎市にあるキャンパスは、コンサートホール、劇場、レコーディングスタジオなどの設備も充実しており、実践重視の学びを日々深めることができる。なかでも「テアトロ・ジーリオ・ショウワ」は、オペラやバレエ、ミュージカルなど様々なジャンルの公演を行う本格的な劇場として知られている。
ステージでは、鎌田紗綾さん(ピアノ演奏家コース2年)が、ハイドン作曲「ピアノソナタHob.XVI-50」より第1楽章を演奏。鎌田さんは昨年、第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで日本人唯一のセミファイナリストに選ばれるなど、さらなる活躍が期待される存在だ。演奏後、「コースごとに担任の先生がついているなど、サポートもしっかりしているので、学生生活を楽しみにしてください」と優しく参加者に語りかけた。
桐朋学園大学・桐朋学園芸術短期大学
伝統と革新で、世界に羽ばたく音楽家を育成
1948年に創設された音楽教室を始まりとし、小澤征爾ら世界的にも著名な多くの音楽家が輩出してきた桐朋学園大学。
「桐朋の一番の売りは、ソルフェージュや音楽理論等の専門科目が充実していることです。専攻の実技レッスンは週一回60分みっちりあり、語学や教養科目群も豊富です」と音楽学部長の中井恒仁教授。
さらに、「『ソルフェージュが難しいから桐朋の受験はやめようかな』という声も時折聞きますが、音を読めて弾ける力は、演奏には絶対に必要。受験のためではなく、良い演奏のためにその力を鍛えてほしい。スポーツの筋トレのようなものです」と来場者に呼びかけた。
アンサンブル教育も盛んで、学内には高校・大学合わせて250もの室内楽アンサンブル、4つのオーケストラがあるという。第一線で活躍する国内外の音楽家から指導を受けられるのも、桐朋の魅力だ。
2025年度には、新たに「ミュージコロジー専攻」が設置される。従来の音楽学専攻の学びを継承しながら、英語による音楽理論などの授業、ロック、ジャズ、ポップスをはじめとする幅広いジャンルの講義を開講する予定。コンサートホールの企画や音楽出版などに貢献する人材の育成を視野に入れているという。
最後に、学生によるユーフォニアム四重奏で、ピーター・スモーレイ作曲「ボール・オブ・ファイア」が演奏され、会場はやわらかで温かみのある音色で満たされた。