東邦音楽大学・東邦音楽短期大学
ウィーン研修施設での本格的な学びも
「ウィーン楽友協会でのリサイタルで、ベートーヴェンの晩年のピアノ作品を聴きました。荘厳な雰囲気の中、国籍を超えて聴衆が感動を共有した時間は、いまも忘れられません」。このように語ったのは、東邦音楽大学卒業生でピアニストの浅井和音さんだ。
同大が誇る短期留学プログラム「ウィーン研修」は、シェーンブルン宮殿の隣接地に所有する「東邦ウィーンアカデミー」で行われる。著名な演奏家からレッスンを受けることができるほか、現地の歴史・文化を体感できる貴重な体験となっている。
手厚いキャリアサポートも魅力の一つ。「東邦スタンダード」という4年間の必修科目では、社会人に必要な教養やキャリア形成力を身につけられる。インターンシッププログラムも充実しており、その経験を大学の学びにつなげる事後学修にも力を入れている。こうした取り組みが評価され、2023年には、学生のインターンシップやキャリア形成支援に係る取り組みを表彰する「学生が選ぶキャリアデザインカンファレンス2023」に、芸術系大学として初めて入賞した。
プレゼンテーションの最後には、落合凜さん(Konzertfach〈演奏専攻〉2年)のクラリネット、内山紀佳さん(管弦打楽器専攻3年)のファゴット、卒業生の浅井さんのピアノで、グリンカ作曲「悲愴三重奏曲 ニ短調」が披露され、息の合った演奏に会場から大きな拍手が送られた。
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洗足学園音楽大学
夢に合わせて多彩な科目から選択できる
管楽器や弦楽器などの演奏を極めるコースに加え、ミュージカルやダンス、声優アニメソングなど、多彩な19ものコースがそろう洗足学園音楽大学。2024年度からは、映像制作に必要な音楽や音響などについて学ぶ「メディアアーツコース」も新設された。
「一人ひとりの夢に合わせて、自由度の高いカリキュラムを組めるのが本学の魅力の一つです」と話してくれたのは、音楽学部の学部長で歌手・ナレーターとしても活動する江原陽子教授。必修科目は選択した実技レッスンのみ。それ以外は、他コースの実技授業や音楽理論などの基礎科目からも自由に選ぶことができる。「アカデミックアドバイザー」との面談を経て授業内容を理解したうえで履修登録ができる体制も整っている。
演奏活動も活発で、大学主催の演奏会は年間200回以上。さらに学食をはじめ学内のさまざまな施設を舞台に、毎日のように学生や教員、卒業生らによるコンサートが開催されているという。また、声優アニメソングとオーケストラ、ミュージカルと現代邦楽など、コースを超えたコラボレーション公演が多数あるのも洗足学園らしい魅力だ。
この日のステージでは、今年3月に同大ミュージカルコースを卒業した中村彩愛さんが、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』より「自由への扉」を歌唱。伸びやかな歌声で聴衆を魅了した。
国立音楽大学
知の集積の中で研究を積み重ねる
「Kunionの豊かな研究環境」と題し、国立音楽大学附属図書館の「ベートーヴェン初期印刷楽譜コレクション」とそれらを用いた授業について紹介したのは、演奏・創作学科鍵盤楽器専修の沢田千秋准教授。
このコレクションは主に19世紀に出版された印刷楽譜で、約1400点が収蔵されている。原曲とは違う楽器編成で演奏するための「編曲譜」の中では、オーケストラ用の曲をピアノで演奏できるよう編曲したものが多くを占める。当時は録音技術がなくオーケストラの生演奏を聴く機会も多くなかったため、一般家庭で交響曲をピアノで弾いて楽しんでいたためだ。
授業では、当時の人々がどのような“ピアノによる交響曲”を楽しんでいたかを知り、原曲と比較してピアノでどのように表現するかを考える。さらに、楽器学資料館に収蔵されている19世紀に使用されていた楽器を弾くことで、当時実際にどのような演奏が楽しまれていたのかをとらえる試みもしている。
「原曲の音楽的な再現を目指して編曲法や演奏法について試行錯誤することは、ピアノという楽器の表現の可能性を自らの力で押し広げ、発見することにつながる」と沢田准教授。
ステージ上では、コレクションの楽譜を用いて、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」や第6番「田園」の一節がピアノの連弾で披露された。演奏した斎藤桃さん(博士課程1年)は、「専門的かつ生の体験を交えたご指導を受け、当時の楽器の試奏をいつでも大学のキャンパス内で行うことができるのは日本に数少ない恵まれた環境」と語った。