奈良教育大学准教授、日本ユネスコ協会連盟理事。地域環境学博士(京都大学)。2002年から宮城県気仙沼市を中心に学校教育や教育行政でESDを推進し、ユネスコスクールの普及や国連大学RCEの設立に貢献。日本ユネスコ国内委員会委員、持続可能な開発のための教育円卓会議議長、ESD活動支援センター企画運営委員長などを歴任し、国レベルでのESDの推進施策に携わる。
教育はSDGsに貢献する
及川さんは「誰一人取り残さない社会をめざした教育を今考えよう!―持続可能な社会を創る教育をめざして―」と題して講演した。17目標と169ターゲットで構成されるSDGsのうち、第4の目標に「質の高い教育」が掲げられているが、及川さんは「教育は単に17目標の一つではない。持続可能な社会の担い手づくりという点で、教育は全てのSDGsの目標に貢献する」として、「それほど教育は重要な役割を果たすものです。教育に携わっている方は非常に誇りをもって捉えていただきたい」と述べた。
学習指導要領におけるパラダイムシフト
話題は学習指導要領とSDGs、ESDの関連にも及んだ。新しい学習指導要領に前文が付き、その中に「持続可能な社会の創り手」という文言が入ったことを、及川さんは「今回の学習指導要領は、SDGs達成に向けたESDの方向性と軌を一にしている」と表現した。
今回の学習指導要領は、学校教育が育成を目指す資質・能力を①生きて働く知識及び技能の習得②未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力③学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性等――の三つの柱に整理している。及川さんは、単なる「知識及び技能」ではなく、「生きて働く」という枕詞が付いている点を「知識の量的ではなく、質的な問題」と読み解き、「未知の状況にも対応できる」も「これから正解のない問いを求める機会がたくさん訪れるので非常に重要」として、「子どもたちが幸せに生きていける教育、さまざまな課題を乗り越えていける教育に変えていこうというマインドセットができるか、大きな分岐点だと思います」と指摘した。