ますます広がる 看護の活躍の場

公益社団法人日本看護協会 副会長
香川県立保健医療大学 学長
井伊久美子さん

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、看護職はその最前線で患者さんのケアや予防にあたっています。今般のコロナ禍は、社会における看護の重要性をあらためて広く認知していただくきっかけになりましたが、それだけでなく現在、看護の活躍の場は大きく広がっています。

 たとえば、今後の医療と介護について、国は「自宅や施設などの利用者本人の住まいを中心に提供する」という方針を打ち出しています。長期入院ではなく在宅療養が基本となり、関係職種が地域単位で連携する「地域包括ケア」が重視される時代がやってきました。看護職はこの連携の核として、未来を担う極めて重要な職種と位置付けられています。2015年10月より、医師の手順書をもとに一定の判断をして特定行為を行うための研修制度が開始されました。また一方で、未知の感染症や大規模災害などの健康危機にも対応していかなくてはなりません。

 社会の看護に対する期待は、ますます高まっています。

 これから看護の道を選ぶ皆さんには、こうした期待に応えられる総合的な力を身につけてほしいと思います。現在の大学での看護教育は、各大学の創意によって多角的な学習環境が整ってきています。高い臨床実践能力、チームの核となるマネジメント能力、的確な予防啓発の知識を中心に、様々な学びが得られるでしょう。

 日本看護協会では、基礎教育をより充実させるための働きかけや夜勤のガイドライン作成などを通して、多くの看護職が力をつけ、働きやすくなる環境づくりに取り組んでいます。看護は、時間をかけて深く探究できる職業です。この道を志す皆さんが知識と経験を積み、長く携わってくださることを願っています。       (談)