「GIGAスクール構想」を背景に、教職員のICT(情報通信技術)への適応が求められています。そのような状況の中、コニカミノルタ社のクラウド型学習支援サービス「tomoLinks(トモリンクス)」の活用が全国の学校に広がっています。“現場の先生”の声を反映しながら開発された「tomoLinks」の特長と、このサービスで実現する教職員の「働き方改革」について、元小学校教諭でICTを活用した教育について研究をしている茨城大学教育学部の小林祐紀・准教授に聞きました。
「tomoLinks」は学校教育におけるデジタル化の支援からスタートした学習支援システムです。現行の小学校学習指導要領が全面実施されて3年。「情報活用能力」が子どもたちの学習の基盤であると示され児童生徒に1人1台の端末を配る「GIGAスクール構想」が教育現場に大きな変化を生んでいます。
小林准教授(以下、小林) 「1人1台端末」の重要なポイントは、それらが安定した通信ネットワーク及びクラウドサービスとつながっていることです。この環境で学習活動を充実させるためには、様々な機能を提供できるアプリが必要になります。そこで、一つのアプリで完結できる「tomoLinks」のようなサービスが求められています。
「tomoLinks」の代表的な機能である「協働学習・遠隔学習」では、児童生徒それぞれが端末で課題解決に取り組み、それを教師が手元の端末でリアルタイムに確認することが可能です。この機能のメリットについて、小林准教授はこう話します。
「協働学習・遠隔学習」では子どもたちの学習状況をリアルタイムで把握できます。それをベースに次の授業の展開を考えることが可能です。授業を受けている児童生徒が他のクラスメイトの課題に「いいね」マークを付けることもできるので、モチベーションアップも期待できます。
“「競争」と「協働」ではどちらが良い結果につながるか?”という議論があります。私は「協働」だと考えています。争うのではなく刺激しあいながら、共に成長する。「協働学習・遠隔学習」はそんな授業や学級を創る手助けになる機能です。授業改善の視点として示された「対話的な学び」に対応しています。
AI導入で見つけた「気づき」
「tomoLinks」は昨年11月より、新たな機能「先生×AIアシスト」の先行実証を開始しました。学力調査や日々の単元テストの結果をAIで分析。膨大なデータの積み重ねと、子ども一人ひとりの傾向を突き合わせて、最適な課題を提案します。
小林 私たちの世代が学校で受けていた授業は、「先生の説明がいかにわかりやすいか」が重要なポイントでした。こうした「教師主導の授業」の成果を認めつつ、学習者中心の授業を実現するという視点がこれからは大切です。例えば、子どもたちの学習性を客観的な視点から確認する中で「自分の授業はこういうところを大事にしてやってきたが、ここがまだ弱い」など、AIを活用することで、授業改善への気づきが生まれることが期待できます。
「先生×AIアシスト」機能も「協働学習・遠隔学習」と同じく、子どもたちの「主体的な学び」にも資するものです。子ども自身が自分の学力の推移や得意分野を見たり、自分の書いたものにクラスメイトがスタンプをくれたりすることでモチベーションアップにつながると思います。
「連絡帳」が変えた働き方
一方、長年叫ばれて久しいのが教職員の労働環境の改善です。小林准教授は、「tomoLinks」に実装されている「連絡帳」機能が、教職員の「働き方改善」に大きな役割を果たすと話します。
小林 学校の先生や子どもたちにとって「連絡帳」を書くための時間は、正式に設定されていません。そのため、子どもたちは隙間の時間を見つけて書き写します。小学校によっては書けているかを先生がチェックしているケースもあります。間違いや誤解のないように書いてもらうことは、本当に難儀なことです。しかし先生がデジタル「連絡帳」に連絡事項を記入すれば、心配はなくなります。 保護者もログインすれば「連絡帳」を見ることができます。「どれどれ、今日の宿題は…」とアプリで確認することができます。
先生からすれば、これまで保護者からの電話に慌てて対応したり、トラブルを抱え込まざるを得なくなってしまったりしていたこともありました。「連絡帳」機能には「返信の必要・不要」や「既読」項目もあるので、過剰な負担につながるやり取りにならないよう配慮されています。「連絡帳」を導入した学校をヒヤリングすると、「夕方以降の電話が減った」などといった声も挙がっています。
授業の質 凸凹を減らす
ICT化で起きる変化では、教育委員会や学校経営側、管理職も積極的な取り組みが求められます。こうした視点でも「tomoLinks」の導入で、効能が期待できると小林准教授は話します。
小林 「連絡帳」は、管理職も先生と保護者のやり取りを確認できるようになっています。状況の把握や対処ができて安心です。 「先生×AIアシスト」による分析も、一人の先生の考えだけではなく、俯瞰した立場から見ることが可能です。 若い先生の成長も見込めますし、ベテランの先生と比べた場合の授業の質の違いの凸凹を減らして、一定程度の質の保証にもつなげていくことができます。データとAIによって、学校全体の傾向を見て取ることもできるようになるでしょうし、教育委員会からすれば学校単位、エリア単位での分析や施策にもつながっていくことが期待できます。
現場はどう変わったか 教師に聞く
実際に「tomoLinks」を導入している教育現場はどう変わったのでしょうか?2021年度から「tomoLinks」を導入している茨城大学教育学部附属小学校の授業を取材しました。
7月中旬の5時限目、複式学級の教室では理科の授業で「協働学習」の機能を活用していました。まずは担任の清水裕太教諭が、太鼓と糸電話を使って「音の伝わるケースと伝わらないケース」を児童生徒に体験させます。「糸をピンと張ると音は(糸電話に)伝わって、糸を緩めると音が聞こえない。なぜでしょうか?tomoLinksに書いてみましょう」。 清水先生の言葉を合図に、児童生徒がタブレットで「tomoLinks」を開き、それぞれが思う理由を書き始めました。手際よく図形を配置して説明しようとする子もいます。モニターに表示されるクラスメイトの意見を確認してから、自分の答えをじっくり考える子もいました。
授業後、清水教諭にお話を伺いました。
清水裕太教諭(以下、清水) 私はほぼ毎時間、「協働学習」機能を活用しています。すべてICTでというわけではなく、効果的なところで活用するなど、使い分けています。また黒板に書いた内容は私が写真を撮って共有しています。これまで子どもにとって面倒だった黒板を書き写す時間が減った代わりに、子どもたちはアイデアを出す、自分の考えをまとめる、ブラッシュアップをするということができるようになりました。
「tomoLinks」の導入で、授業を「より計画的に進められるようになった」と清水教諭は話します。
清水 「協働学習」ではリアルタイムに子どもたちの意見をある程度、把握できます。その後に発表してもらうときは、挙手にかかわらず事前に頭の中で「指名計画」を作って授業を進めることができます。 つまずいている子の状況もわかるので、個別指導にも役立っています。
「tomoLinks」の操作性は非常にいいと思います。周囲の先生も含めて、大きな負担なく操作することができているようです。誰かが作ったワークシートを他の先生も閲覧できるので、実習生や若い先生たちとも共有して、今後は研修の材料としても活用することができると思います。
負担軽減で増えた「児童生徒との時間」
5時限目の授業が終わり、続いて6年生の教室へ。「帰りの会」で使われていたのはデジタルの「連絡帳」機能です。伝達事項や翌日の持ち物を大きな画面に映して担任の直井裕紀教諭が説明します。モニターに表示された項目を確認した児童生徒たちは「さようなら!」。元気に下校して行きました。
直井裕紀教諭(以下、直井) 連絡帳を電子化したことで本当に大きな負担軽減につながっています。紙の連絡帳は時間を作って子どもたちに書いてもらわなければいけませんでしたが、今は自分が隙間時間に入力するだけで終わります。入力後、「追加の連絡事項も入れなきゃ!」と思ったときも、手元でサッと更新することができます。この負担軽減で子どもたちと別の形で関わる時間などが増えました。
「連絡帳」の導入で、保護者とのコミュニケーションも「大きく変わりました」と直井教諭は話します。
直井 以前は毎朝、欠席連絡の電話がひっきりなしに鳴っていましたが、今は「連絡帳」に入力していただければ一目でわかります。保護者の方からの伝達内容も、電話連絡が必要なのか選べる機能もあるので、優先順位や重要度も把握できるようになりました。「先生からの連絡事項が誤解もなくきちんと受け取れるようになった」と好意的に受け止めていただいています。
「現場」に寄り添い、進化を続ける
「tomoLinks」はコニカミノルタ社がデータサイエンスの分野で培った技術や実績を生かし、更に教育現場の声に寄り添って、随時、改善や充実を続けていく予定です。
小林 教育現場でのデジタルトランスフォーメーションの完成系はまだ誰も知らない中で、一歩踏み出すことで効率化できることがたくさんあります。「tomoLinks」は協働学習からAI、連絡帳まで必要な機能が一つのアプリにまとまっています。様々な教科・場面で、先生や子どもたちのアイデア次第でいろいろな活用ができるシンプルな仕組みになっていることが、とても大きな強みです。
tomoLinksの詳しい機能説明はこちらから。