1882(明治15)年に創立された大阪YMCA。創立以来、いち早く英語学校などの教育事業に取り組んだ伝統は、現在では専門学校や日本語教育分野に広く継承されている。さらに、バスケットボールなど各種スポーツの日本への紹介や普及のほか、日本初の組織教育キャンプを実施するなど、青少年育成の分野でも果たす役割は大きい。日本各地の自然豊かなロケーションにキャンプ場や宿泊施設を開設し、野外活動を通じて青少年世代の行動力や判断力を育んでいる。昨年からは新たな取り組みとして「SDGsキャンププロジェクト」をスタート。今年は8月に阿南市(徳島県)で実施したのち、923日~25日の阿南市、108日~10日の三浦市(神奈川県)での開催を控えている。

 様々な気づきと成果を手にする「SDGsリーダーズキャンプ」

YMCAが考える「SDGsキャンプ」とは、生きる力を育むキャンプと海洋教育を一体化させ、自らの体験を通じてSDGsの本質を理解しようというものだ。「SDGsには17のゴールがありますが、どれか一つを達成するというよりも、目の前で起きる出来事に対して課題を見つけ、それを自分事としてとらえ、解決につなげる力を養います」と話すのは、SDGsキャンプをデザインした菅田斉さん(YMCA阿南国際海洋センター所長)。とりわけ、SDGs達成年の2030年に社会で活躍が見込まれる小中高世代と、SDGsを学校教育や企業等での研修の場に落とし込みたいとする社会人の参加を想定している。

9月23日~25日にYMCA阿南国際海洋センターで行う「SDGsリーダーズキャンプ」は社会人が対象。センターは海に面し、沖合800㍍には自己所有の無人島が位置している。行程では、海洋教育を教育の場でどう展開するかを論じる講演会のほか、様々な海洋体験も行う。参加者の手でカヌーを漕ぎたどり着く無人島では、「目の前で起きる些細なことにも着目し、何かを感じてほしい」と菅田さん。例えば島には様々なごみが漂着するが、無人島では工夫次第で何かの役に立つかもしれない。また炊事の際には、限られた水をどう有効に使うのか。そしてその先にある、水資源不足に困窮する国々にも思いを巡らせることもできる。昨年同キャンプに参加した学校教育関係者からは「SDGsを教育現場に導入するイメージがわかなかったが、気づきを促し、行動を起こせる人材を育むことが大切だとわかった」との声も。他にも、行政での環境政策担当者や野外教育関係者など、様々な属性の参加者が成果を持ち帰り、横のつながりも生まれているという。

SDGsリーダーズキャンプ詳細は
http://www.osakaymca.or.jp/outdoor/anan/blog/2022-07-29.html

 主体性のもと課題を発見。
解決の道筋を考える「SDGsジュニアリーダー養成キャンプ」

108日~10日に三浦YMCAグローバル・エコ・ヴィレッジ(神奈川県)で実施する「SDGsジュニアリーダー養成キャンプ」は中学生・高校生が対象。同じく中高生向けに阿南市で8月に開催して成果を挙げたキャンプのエッセンスを各所に取り入れる。

ヴィレッジは自然豊かな三浦半島の海と山に囲まれた、多様性に恵まれたロケーション。綿密なプログラムは設定されておらず、その場に立ってみて湧き出る子供たちの好奇心や知りたいことに基づき、アクティビティーが提供される。「山の植物に目を向ける子もいれば、海の生き物に関心を持つ子もいるでしょう。子供たちが描く『知りたいゴール』に合わせた指導者の柔軟なアプローチで、SDGsの課題と本質を体感できる時間となるでしょう」(菅田さん)。課題として感じたことや気づきはメンバー同士で共有し、それに対する各自のアクションプランを策定し、意識を高めていく。宿泊のテントを張る場所も自分たちで決めるなど、子供が主体のキャンプになる。

「普段の生活に戻った時、これまでは不自由なく過ごせていると思っていた日常の中にどんな課題があって、解決のためにどんな取り組みができるか? SDGsキャンプに参加した後はそんな視点が身につく行動変容に期待します。2030年、自分たちが主役になるんだ!という気概を持って参加してほしいです」と菅田さんはメッセージを送る。

SDGsジュニアリーダー養成キャンプ詳細はhttps://www.yokohamaymca.org/event/2022_sdgs_camp/ 

BTB溶液でアルカリ性を確認した海水に息を吹きかけて酸性化を実感

 

報告会。自分たちの計画・活動がどうSDGsと結びつくのかを発表

 

※写真はすべて8月18日~20日に開催された「SDGsジュニアリーダー養成キャンプ」(阿南市)から