2年目を迎えた大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)の難化とコロナ禍の影響が続く中での2022年度入試となりましたが、国公立大の前期試験が終わり、3月10日までには各大学から合格発表が行われます。私立大入試もあとは3月入試や後期入試を残すだけになり、いよいよ終盤戦です。まだ受験が続く人は悔いのないよう、最後まで粘り切ってください。そして、4月から受験学年となる高2生は、最終学年の高校生活を充実させながらも、第1志望校合格のために学習時間をどれだけ確保できるか、また、集中して取り組めるかが重要になります。これまでよりもいろいろと我慢が必要なことも増えることを覚悟しましょう。
さて、今回は国公立大の2022年度入試志願状況についての分析を速報としてお知らせします。以下の文章での( )内の数値は前年度の志願者数を100とする指数を表しています。この数値が大きいほど増加率が大きく、競争が厳しくなったことを示し、反対に小さいほど減少率が大きく、競争が緩和したことを示します。
志願状況全体概況 ~一般選抜志願者数は3年ぶりに増加~
文部科学省が2月22日に発表した2022年度国公立大一般選抜の確定志願状況によると、確定志願者数(独自日程で入試を実施している国際教養大、新潟県立大、叡啓大および専門職大学を除く)は428,623人で、前年度と比べて3,255人(101)の増加で、微増ですが3年ぶりの増加でした。一方、募集人員は343人の微減で、志願倍率は4.30倍→4.35倍とほぼ前年度並でした。
上のグラフは、2013年度から2022年度までの10年間の志願者数と志願倍率の推移を表したものです。志願者数はゆるやかな減少傾向で、2020年度、2021年度の2年間は減少幅が大きくなりました。しかし、2022年度は共通テストの志願者数が4,878人(99)の微減にもかかわらず、国公立大全体の志願者数は微増となりました。これは、共通テスト受験率が90.5%から92.1%にアップし、共通テスト受験者数は4,270人(101)の微増だったことが要因でした。
設置・日程別志願状況
国立大は、前期は2,142人(101)の微増、後期は4,880人(104)のやや増加でした。この結果、国立大全体では7,022人(102)の微増で、11年ぶりの増加となりました。共通テストの難化はありましたが、難関大を中心に成績上位層でも共通テストの得点ダウンが顕著だったことにより、結果として個別(2次)試験の比重がより高くなったことが周知されたことから強気な出願傾向が見られたことが要因でした。
公立大は、中期は2,289人(108)と増加しましたが、前期は3,535人(94)、後期は2,521人(94)といずれもやや減少しました。これは、共通テストの900点満点の予想平均点が文理いずれも大幅ダウンし、例年の国公立大の最も低い目標ラインを下回った受験生も多数出ました。こういった層が、比較的合格目標ラインが低い大学が多い公立大の前期、後期志望者に多く、国公立大への出願をあきらめてしまった影響が強く出たことが要因と考えられます。一方で、中期はコロナ禍の中での厳しい経済環境を反映して、国公立大志向が高まる中で受験機会を確保したいという志向が表れました。この結果、公立大全体では3,767人(97)のやや減少で、3年連続減少となりました。
志願者数が多い国公立大
上の表は、文部科学省発表の最終確定値、大学全体の志願者数が多かった国公立大の上位10大学をまとめたものです。志願者数が7,000人以上だった大学は9大学で、前年度と同数でした。前年度は10大学中7大学が志願者数減少だったのに対し、今年度は7大学が志願者数増加になりました。10大学のうち、第5位の東京大、第8位の大阪大はいずれも前期のみの募集です。第7位の京都大の後期は、特色入試として実施の法学部のみの募集です。
2022年度入試での志願者数が最も多かったのは、旧大阪市立大と旧大阪府立大が統合した大阪公立大で、募集人員は前年度の旧2大学合計よりは96人減少したものの、公立大としては国内で最大規模の大学になりました。志願者数は前年度の旧2大学合計よりは601人(96)とやや減少しましたが、1万3千人を上回りました。
第2位の千葉大は、前年度まで6年連続志願者数が最多の大学でしたが934人(92)と減少しました。しかし、それでも2010年度から13年連続で志願者数が1万人を上回りました。第3位の神戸大は、113人(99)の微減でしたが志願者数が2年連続で1万人を上回りました。大都市圏の最難関大に次ぐ難易度の大阪公立大、千葉大、神戸大がいずれも前年度よりも志願者数が減少したのは、共通テストの平均点ダウンの影響がいわゆる準難関大に大きかったことを示しています。
第4位の北海道大は、前年度はコロナ禍の影響による遠距離移動を回避する動きから10%以上の減少でした。この反動もあって3年ぶりの増加でしたが、志願者数は1万人には届きませんでした。
第9位の横浜国立大は、前年度はコロナ禍対策として個別試験を中止し、共通テストの成績を中心に選抜を行いましたが、これへの敬遠傾向が強く、志願者数を大きく減らしました。今年度は2020年度入試以前と同様に個別試験を実施し、3,111人(174)の大幅増加となりました。しかし、2020年度の志願者数7,581人には及ばず、先にも述べた準難関大への共通テスト平均点ダウンの影響があったことがわかります。
以上、2022年度入試の国公立大の志願状況をまとめました。大学別の詳細な分析や2022年度入試変更点などは駿台予備学校のホームページに随時掲載・更新していますので、ぜひ参照してください。また、高2生の皆さんには、2023年度入試情報は現在公表されている情報が確定事項というわけではありません。最終的な確定情報が出揃うのは、各大学の選抜要項が公表される7月以降になります。まだまだ、コロナ禍の影響は完全になくなりそうにありません。今後も大学入試センターや志望大学のHPなどを定期的にチェックしてみてください。
これからの大学入試
さて、長きにわたってお送りしてきたこの「志望校選びのアドバイス」も残念ながら今回が最後となってしまいました。いよいよ、4月に入学する新高1生から新しい学習指導要領による学びがスタートします。すでに、2回実施された共通テストも旧センター試験とは出題形式が大きく変わっています。ICT技術がさらに発展し、AI(人工知能)の利用ももっと身近な分野まで拡大していくことは間違いありません。こういった新しい時代にふさわしい学びや学力の養成が必要になっているのです。「知識、技能」の習得は当然ですが、それに裏付けられた「思考力、判断力、表現力」が求められており、それを評価するために大学入試の改革が行われています。
特に、多様なコミュニケーションツールが存在する現在の社会ですが、基本となる文字を通した伝達、つまり高度なレベルの読解力が要求されています。玉石混合の情報が氾濫している現在の社会、その中から正確で本当に必要なものを見つけ出し、分析・加工して、他者に伝えていく能力が求められているわけです。共通テストにおいても、まだまだ出題傾向が定まったとは言えない状況ですが、こういった今の大学入試が置かれている状況を理解して、基礎からしっかりと学力を向上させていけば、克服は可能です。これからも引き続き駿台のホームページなどで情報発信を行いますので、うまく活用していただいて、志望校選びのお伝いをできればと思います。
それでは、これまでのご購読ありがとうございました。今後も皆さんが日々努力を続けられ、第一志望校に合格格されることをお祈りいたします。