1月15日(土)、16日(日)に2022年度大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)が実施されました。以前の大学入試センター試験(以下「センター試験」)から、共通テストに変更されて2回目の実施でしたが、その概況についてお知らせします。
2022年度共通テストの志願者数は、前年度と比べて4,878人減少(前年度比-0.9%)で、530,367人となりました。現卒別では、現役生が426人減少(前年度比-0.1%)で、既卒生等が4,452人減少(前年度比-5.2%)でした。現役生の志願率(高校卒業見込者数に対する志願者数の割合)は45.1%と前年度より0.8ポイントアップし、志願者数に占める現役占有率(全志願者数に占める現役生の割合)も84.7%となり、前年度より0.7ポイントアップしました。このように、近年の現役生中心の入試という傾向がさらに強まりました。
ところで、国公立大の出願期間は、2022年度入試では1月24日(月)~2月4日(金)ですが、2月中旬には最終志願者数が発表されますので、3月号のこのコーナーで詳細をお知らせできると思います。
次に、自己採点集計データネット(データネット実行委員会:駿台予備学校/ベネッセコーポレーション主催)へ提出された409,910人(センター試験志願者数に対する集計率約77.3%)のデータをもとに、分析していきたいと思います。
表1は、1月21日(金)に大学入試センターから発表された「中間集計その2」における主要科目の平均点一覧です。
この結果からデータネット実行委員会が推定した5教科900点満点の予想平均点は、5教科8科目文系では508点(得点率56.4%、前年度対比-44点)、5教科7科目理系では513点(得点率57.0%、前年度対比-59点)となりました。新しいテストの2年目は平均点がダウンするという状況はかつての共通一次試験、センター試験でもみられましたが、予想をはるかに超えるダウンとなり、得点率は文理ともに6割を下回るという結果で、データネットにおける得点率8割以上の高得点者の人数は前年度比で文系が33.8%、理系が37.5%に留まり、成績上位層にも大きな影響を与えました。
図1に「中間集計その2」における主要科目の平均点を前年度の最終集計(前年度は公民と理科②で得点調整が行われたので得点調整後の平均点)での数値との比較を見ていくことにします。
主要科目では受験者数が1万人に満たなかった地学を除いて、平均点がアップしたのは英語リスニング(+3.3点)、化学基礎(+3.1点)、英語リーディング(+3.0点)、現代社会(+2.4点)、世界史B(+2.3点)などでした。一方で、平均点がダウンしたのは、生物(-23.8点)、数学I・A(-19.7点)、数学II・B(-16.9点)、日本史B(-11.5点)、化学(-10.0点)などでした。前年度と異なり、平均点がダウンした科目がめだち、しかもダウン幅が大きい結果となりました。
なお、得点調整対象の教科内で受験者数1万人以上の科目間の最大平均点差は、地理歴史が13.02点、公民が6.5点、理科②が13.09点といずれも20点以内だったことから、前年度とは異なり得点調整は行われませんでした。また、得点調整対象外の教科では、理科①では、選択パターンの多い「化学基礎と生物基礎」、「生物基礎と地学基礎」の平均点合計の差が前年度よりも1.13点小さくなりましたが、地理歴史、公民で理系の選択者が多い「地理B」と「倫理、政治・経済」の平均点差は1.56点大きくなり、平均点差も10点を上回りました。
次に、5教科型900点集計の得点帯ごとにどのような得点変動があったかをみると、5教科8科目文系では、580点以上の得点層で全体的に人数が減少しました。前年度の分布で最も多かった560点~590点の層は、今年度の得点に換算すると約515点~約540点となり、50点弱ダウンしました。
5教科7科目理系でも同様の傾向で、前年度の分布で最も多かった600点~630点の層は、今年度の得点に換算すると約535点~約565点となり、70点弱ダウンで文系よりもダウン幅が大きくなりました。
続いて、データネットにおける系統別の志望動向についてみていきます。今年度の国公立大全体の志望者数は対前年度指数(前年度志望者数を100としたときの今年度志望者数の割合)は96とやや減少しました。系統別では、生活科学、総合科学、医学などで志望者数の対前年度指数がダウンしています。また、近年人気が継続している情報系統については、総合科学、理学、工学に分かれていますが、専攻別でみると志望者数の対前年度指数は、総合情報学が93、情報科学が94、情報工学が101と人気の高止まりがみられました。
難関国立10大学(北海道大、東北大、東京大、東京工業大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、神戸大、九州大)全体の志望者数は対前年度指数95とやや減少しました。日程別では、前期日程は対前年度指数96のやや減少、後期日程は指数89の減少で、共通テスト平均点ダウンの影響から目標ラインの高い後期日程の減少がめだちました。
文理別にみていくことにします。まず、文系ですが、北海道大、名古屋大、神戸大などで法学部の志望者数が増加しましたが、文学部では多くの大学で志望者数の減少がめだちました。
次に理系ですが、北海道大・水産学部や京都大・工学部などで増加がめだちました。京都 大・工学部は平均点がダウンした共通テストの数学の得点が合否判定には使われないことも影響しています。名古屋大・農学部では2022年度入試より個別試験に国語(現代文)を追加しますが、秋の模試動向と同様に志望者の減少がみられました。
最後に医歯薬系です。秋の模試動向では薬学を中心に高い人気がみられていましたが、共通テスト平均点ダウンの影響などにより、志望者数が減少している大学・学部が多くみられました。
以上が共通テストの結果概要とデータネットにおける志望状況ですが、2022年度入試に立ち向かう高3生、既卒生のみなさんは、共通テストの自己採点での得点は結果として受け止め、頭を切り替えて、国公立大個別(2次)試験や私立大入試にむけた直前対策をしっかりとやってください。とにかく、終わった共通テストの結果にいつまでも気をとられてしまって、入試直前の追い込みに失敗するという悔いを残すことだけはないようにしてください。
新型コロナウイルス感染症の収束がいつになるかはまだ不透明です。2022年度入試においても、今後さらにコロナ禍対策として、追試験の実施や特例措置など様々な施策が実施される可能性もあり、志望大学から発信される情報には常に敏感になってほしいと思います。 落ち着かない入試とはなっていますが、私立大入試や国公立大個別(2次)試験まで、体調管理には細心の注意を払い、最後まで努力を続けてください。みなさんのご健闘を心よりお祈りいたします。
また、高1・2生のみなさんへのアドバイスです。過去2年間の共通テストの問題は追試験を含めて必ず解いてください。実際に問題にあたることで、大学入試センターがみなさんに求めている力は何かを実感できると思います。2023年度入試については、正式には7月の入学者選抜要項で発表されることになっていますが、7月以前にホームページで入試変更を随時発表する大学も増えています。まだまだコロナ禍の影響が見極めにくい環境ですが、高1・2生のみなさんも、常に最新の情報を手に入れることを怠らないようにしてください。