今春、桃山学院大学が開設したビジネスデザイン学部では、企業などとの協働により新たなビジネスの仕組みを創出、実践し、予測困難な時代を強く生きる学生を養成している。産業界と連携した実践科目が同学部の特徴の一つだ。今回、学生たちは全3回の特別講義で、朝日新聞社から提示された課題の解決に挑んだ。

桃山学院大学ビジネスデザイン学部

新しい価値をチームで創造する

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界は大きく変わった。「不安定」「不確定」「複雑性」「曖昧性」の時代、いわゆる「VUCA」の時代にある。将来の多様な困難に立ち向かうためには、多くの人のつながりが不可欠だが、一方で一人ひとりには「新しい価値を生み出す力」が求められる。  このような状況を見据え、桃山学院大学(大阪府和泉市)は、開学60周年にあたる2019年4月にビジネスデザイン学科を設置、21年4月には入学定員を70人から200人に拡大し、「学部」として新たにスタートした。VUCAの時代に、「チームで新しい価値を創造する」力を有し、社会の課題を解決していく人の養成を目指している。

企業や団体とともに課題解決に取り組む

 ビジネスデザイン学部では、70を超える企業や団体、自治体などと連携した実践型の授業を中心に、特色ある学びを展開している。その一例が、1年次から取り組む課題解決型学習(PBL)だ。連携企業や、団体などが提示した課題に取り組む数は年間で約30にも上り、中には、課題を提示した企業などの社員とともに取り組む授業もある。実施するPBLの特徴は、取り組む数の多さだけではない。通常であれば「理論→実践」といった順序で学びを進めるケースが多い中、同学部では「まず実践してから専門理論を学ぶ」従来とは「逆さま」のカリキュラムで授業が行われ、学習効果を高める点も大きな特徴である。その結果、1年生の考えたプランに企業から実現化の声がかかったり、上級生はビジネスプランコンテストで複数入賞するなど、実績を出している。  今回、朝日新聞社から提示された「新しいメディアビジネスを創造せよ」という課題に1、2年次の学生19人が取り組んだ。同社が提示した課題に、学生はどのような答えを出したのだろうか。

ビジネスデザイン学部の拠点は、2020年8月、大阪市内に竣工した聖テモテ館であり、同館は21年度グッドデザイン賞を受賞した。4階〜9階に位置する「あべのBDL(ビジネスデザイン・ラボ)」に、学生たちが学ぶレクチャー&ワークショップルーム、ラーニングコモンズ、およびカフェなどが配置されている。

学生が朝日新聞社からの課題に挑戦「新しいメディアビジネスを創設せよ」

顧客像と顧客課題を深く分析、考察

今回、朝日新聞社から提示された課題は「朝日新聞社の社員として、新しいメディアビジネス※をつくること」。また、そのプレゼンテーションを3週間後の第3回講義に行うことであった。
冒頭、学生に向けて朝日新聞社の尾関高志プロデューサーからオリエンテーションがあり、新聞発行を主軸に多くの事業を手掛け、新規事業の創出も積極的に展開する同社の概要が説明された。その後学生は4チームに分かれ、「事業責任者」「編集者」「営業」など企業の実務さながらに役割を分担。閲覧者や広告主といった「顧客」像を掘り下げチームで共有すること、さらにその顧客へ提供できる価値のバランスが保たれていることなど、メディアビジネス創出の際に留意すべきポイントも学んだ。
第2回講義ではプレゼンテーションに向けた中間発表を行った。また、事業の全体像を把握できるフレームとしてビジネス現場でも活用される「ビジネスモデルキャンバス」などを駆使したグループワークも行い、提案の精度をより高めていった。
集大成のプレゼンテーションは、牧野丹奈子学長、担当教員の岡田明穂特任講師ほか計4人の審査員が見守る中で行われた。審査基準のうち「顧客像は明確か」「顧客課題に応じた価値提供があるか」への配点比率が高く、発表内容はそれらについて特に深い分析と考察がされていた。

※媒体を通じて社会・読者・企業などが持つ課題を解決する事業

特別講義を終えて

講義に参加した田中麗愛さん(1年次)は、「普段から社会や人々の悩みをしっかり捉え、解決策(ビジネス)を提案することを実践的に学んでいる。今回も『空想を超えた現実的・独創的な提案』ができた」と話す。また、松田恭香さん(2年次)は、「学年を越えた初めての取り組み。初見のメンバーの性格理解や目的の統一など、学部で学んだ『最新のリーダーシップ』を確認することができた」と振り返る。
岡田特任講師は「顧客は誰で、どんな問題を抱え、ハッピーを提供するには何をすればいいか考えることを学びの軸としてきた。それを再認識できた」と講義の成果について語っていた。

新聞社担当者は東京からリモートでアドバイス。提案をブラッシュアップ
課題が終わって充実の表情をみせる学生(撮影時のみマスクを外しています)

4チームによるプレゼンテーション内容

新聞社の強みを生かした提案も

最優秀賞を受賞したのは、大学生向けのニュースアプリを企画したチーム。政治経済分野をはじめ、就職活動やその先の将来に役立つ情報提供に、朝日新聞社ならではの強みを生かした付加価値を提案した。
その他には、転職希望者が「ベンチャー企業やスタートアップ企業の情報に触れる機会の少なさ」に着目し、朝日新聞社の取材力を生かした記事サイトでマッチングするサービスを提案したチームや、ツイッターの「トレンドワード」の真相を掘り下げるべく、朝日新聞社の強みを生かし、情報源が明確な記事をトレンドにひもづけ、世の中により正確な情報を発信するサービスを提案するチームもあった。
また、育った環境から「能力に関係なく、将来の夢をあきらめざるを得ない子どもがいる現状」と、「自作の趣味のイラストなどを匿名で公開したいニーズ」をひもづけ、作品の投稿によって子どもたちに寄付されるコミュニティーサイトを提案したチームもあり、社会性と事業性を両立させた点が高い評価を得た。

学生のプレゼンテーションに対しての講評

社会性と実業性を両立させた新しいビジネスに期待
■桃山学院大学 牧野丹奈子学長

すべての提案が、社会性と事業性を両立させたビジネスモデルになっていました。学生それぞれがチーム内での自分の役割を見つけ、能力を発揮していた努力の跡も感じられました。このように、自分が伸ばすべき個性と能力を見つける場が大学です。学生の皆さんの更なる成長に期待しています。

社会で生かせるビジネス力と人間力
■朝日新聞大阪本社メディアビジネス局長 安場孝

3回の講義を通じ、きわめて実践的な学びを展開されている学部だと実感しました。ビジネス的なスキルだけでなく、相手をリスペクトした質問の仕方や、チーム内の意見の違いを乗り越えまとめていくファシリテーション能力など、人間的スキルの高さも感じました。こうした能力は、社会ですぐに生かせると思います。

短期間で的確に完遂した学生たちに驚き
■朝日新聞社総合プロデュース本部プロデューサー 尾関高志

新規事業では①パーパスをメンバー間で共有すること、②顧客を理解することの二つが大切です。短期の講義にもかかわらず、すべてのチームにおいて、この二つを固めきれた学生のスピード、チームワーク、スキルには驚かされました。これからもチームで新しいビジネスの仕組みをつくることに挑戦してほしいです。

ビジネスデザイン学部の情報は
桃山学院大学ホームページから