12月になって、本格的な寒さがやって来ました。北海道や東北だけでなく関東以西でも日本海側や山間部を中心に雪の便りが届くようになりました。幸いにも、日本では新型コロナウイルス感染症は日々の新規感染者数もわずかな人数に留まっており、落ち着きを見せています。しかし、海外では感染拡大が続いている国も多く、オミクロン株という新しい変異ウイルスの脅威が心配されています。受験生の皆さんは、入試直前の大切な時期に新型コロナウイルス感染症やインフルエンザで体調を崩しては、学習の遅れ以上に焦りや不安を生んでしまいます。マスク着用、手洗い・うがいの励行など引き続き感染症対策をしっかりと行って健康維持に留意してください。
さて今回は、まず先月号の9月12日が実施基準日だった第1回駿台・ベネッセ共通テスト模試の動向に続いて、10月30日が実施基準日だった第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試の動向をお知らせします。そして、12月期の学習で注意すべき点についてもまとめてみました。
2021年度第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試系統別動向
【国公立大】国公立大全体の志望者数は前年度対比指数(以下「指数」と表記。また、系統名、専攻名および大学名、学部名等の後のカッコ内の数字は「指数」を表します)110の増加でした。2020年度は2019年度対比で指数88の減少だったので、ほぼ2019年度並の志望者数に戻りました。この結果、すべての系統が実人数では前年度対比では増加となりました。2020年度が新型コロナウイルス感染症の拡大や学校一斉休校の影響でこの時期の模試受験を敬遠する動きがあったことから受験者数は減少したのですが、今年度はその影響がなくなりました。以後の分析は全体指数110を基準として増減を見ていくことにします。
文系の系統では、社会(119)、法(114)が全体指数以上の増加率でした。社会は地方大での増加が目立っており、地元志向の強まりが続いています。法は近年の志望者数減少の反動と経済活動の厳しさから公務員志向が高まっている影響があります。一方で、外国語(102)、国際関係(105)は全体指数の増加率を下回り、コロナ禍の影響を強く受けている2系統への人気の回復が見られません。
文理いずれからも志望者がいる系統では、生活科学(121)、スポーツ・健康(117)、芸術(116)が全体指数を上回る増加率でした。生活科学は前年度の減少率が大きかった反動が見られます。スポーツ・健康は東京オリンピック・パラリンピックがコロナ禍の中でも無事に開催されたことで、再度この分野への関心が高まったことが影響しました。芸術は専攻別では映像(120)が全体指数よりも10ポイントも増加率が高く、いわゆる映像クリエーター系の分野への人気の高まりが見られました。一方で、総合科学(104)の増加率は全体指数を下回りました。系統への人気は高いものの、2021年度入試での志願者数増加の反動が見られました。
メディカル系の系統では、薬(121)が全体指数よりも高い増加率となりました。コロナ禍の中での創薬への関心が高まったことが影響を与えました。保健衛生(107)の増加率は全体指数を下回りました。先に述べた総合科学と同様に系統への人気は高いものの、2021年度入試での志願者数増加の反動が見られました。医(111)、歯(108)はほぼ全体指数と同じ増加率でした。
理系の系統では、理(112)、工(110)、農・水産(110)とほぼ全体指数と同じ増加率でした。国公立大理系進学へは科目負担が重いというハードルがあることから、「理高文低」とはいっても、理系志望者の増加には限界があることがわかります。
【私立大】私立大全体の志望者数指数は118の大幅増加で、外国語を除く17系統が実人数で増加しました。増加率は国公立大の全体指数よりも大きく、前年度は共通テストへの敬遠傾向があった私立大専願層が積極的に共通テスト模試に参加していることがわかります。以後の分析は全体指数118を基準として増減を見ていくことにします。
文系の系統では、法(125)が全体指数を上回りました。国公立大同様に近年の志望者数減少の反動と経済活動の厳しさから公務員志向が高まっている影響があります。一方で、国際関係(112)は全体指数を下回る増加率で、外国語(96)は前年度よりさらに減少しました。外国語は改組により系統分類が国際関係に変わった募集単位がある影響も加わり減少になりましたが、両系統ともに国公立大と同じくコロナ禍の影響が続いています。海外渡航制限がなくなり、留学に支障が無くなるまで、コロナ禍以前の人気には戻らないと思われます。
文理いずれからも志望者がいる系統は、いずれも全体指数よりも増加率が小さくなりました。スポーツ・健康(111)は、国公立大ほどは人気が戻っていません。他の系統は、前年度の減少率が小さかったことから今年度の反動も小さく、全体指数よりも増加率は小さくなりました。
メディカル系の系統では、薬(130)が全体指数を12ポイントも上回る増加率でした。国公立大と同様にコロナ禍により創薬への関心の高まりが影響していますが、人気は難関大に偏っており、二極化が起きています。歯(124)は2021年度入試で大幅減少の反動が見られます。医(116)はほぼ全体指数と同じ増加率でした。
理系の系統では、理(123)、農・水産(123)は全体指数を上回る増加率でした。工(119)はほぼ全体指数と同じ増加率でした。工の専攻別を見ると応用化学(131)、情報工学(126)が全体指数を上回っており、情報工学系への関心の高さが継続しているとともに、近年人気の低下が見られた応用化学ですが、それにも底を打った感が見られます。「理高文低」の傾向は国公立大よりも科目負担が軽い私立大でより強く出ているようです。
12月期の学習法
主に共通テスト対策を中心に、12月期の学習の注意点について見ていきましょう。まず、英語、数学、国語は、一般的な高校のカリキュラムで高2までに履修した範囲内で出題されることが基本ですから、どの高校に在籍していても進度面でのハンディキャップはほとんどありません。つまり、これらで苦手科目・分野があるという人は、高1・2の段階でどこか理解不十分な部分が残っているのだと自覚して、思い切って基礎的な部分をもう一度やり直すことが大事です。一見すると、それでは学習計画が遅れてしまうように思われますが、年内ならばまだ十分に間に合います。「急がば回れ」のことわざのとおり、今が苦手科目・分野を克服する最後のチャンスです。
次に、教科書レベルの基礎力は身に付いていて理解できているはずなのに、模試では思ったような得点を取ることができない人は、実戦的な練習が不足していることが考えられます。共通テストでは決して難しい問題は出題されません。しかし、試験時間は英語、国語がそれぞれ80分、数学①が70分、数学②、理科②、地歴・公民が1科目につき60分、理科①が2科目で60分と短いことから、てきぱきと解答していかないとすぐに時間不足になってしまいます。特に、共通テストは問題文が長いという特徴が見られるため、時間の使い方が重要になります。
さて、本番では緊張や環境の変化で日頃の力を充分に発揮できないこともよく起こります。こういった事態も想定して、今まで以上に試験時間を意識して効率的に解答していく訓練が重要です。得意科目では、本番で存分に力を発揮するためにも、実際の試験時間より1割程度時間を短く設定して、解答していくという方法が効果的です。マークし終わったら終了間際で、見直す時間が取れないということのないように、これからは時間を意識した練習を行っていきましょう。
進度の関係で対策が遅れがちになる理科や地歴・公民は、最後まで学校の日々の授業を大切にしてください。これからはもう一度やり直すという時間を取るのは難しくなります。授業で全部理解するという気持ちで、毎回の授業に臨んでください。もちろん集中して聞いてもわからない点は出てきますから、授業の中でわからなかった点をはっきりさせ、積極的に先生に質問して、不明な点を先送りすることなく解決していきましょう。
そして、解決できた分野については、共通テスト対策問題集を使ってしっかりと演習を行い、実戦力の養成も忘れないようにすれば、入試直前期のラストスパートが楽になります。
模試の志望校判定に一喜一憂しすぎない!
受験生は今までに模試を複数回受験してきたと思いますが、この模試の有効活用について確認しておきたいことがあります。記述式模試では、きちんと設問別平均点と自分の得点とを照らし合わせて見てください。また、共通テスト対策模試では、設問ごとの正答率を確認して、受験生全体の平均点が高い問題、あるいは正答率が高いのに得点できなかった問題をチェックし、なぜできなかったかを分析して、その対策をしっかりとやっていく必要があります。
つまり、模試を受けた後にどれだけ自分の弱点補強ができたかで模試の価値が決まるというわけです。不明な点や誤答部分については、「本番前に発見できて良かった」と考えましょう。なかなか成績が思うように伸びずに苦しんでいる人も多いと思いますが、コロナ禍もあって、弱気な受験生が多いだけに、最後まで第一志望をめざして努力を続けることが重要な入試になります。