新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらず、東京では再び緊急事態宣言が発せられました。そんな中で、東京オリンピックは地方開催の一部会場を除いて、無観客での実施という異例の形態とはなりましたが、7月23日に開会式が挙行され、本格的に競技も始まりました。すでに、日本選手のメダル獲得のニュースなどで盛り上がっていますが、受験生のみなさんは決してオリンピック・パラリンピックの話題に翻弄されることなく、自分の計画を日々着実に進めてください。この夏の頑張りが来年の入試結果に繋がることは間違いありません。新型コロナウイルス感染症や熱中症などにも十分な注意を払って、体調を崩すことなく頑張ってください。

今回は、なかなか決まらなかった2022年度大学入試スケジュールについてお知らせするとともに、第1回駿台全国模試(5月30日実施)の実施結果による系統別動向についてまとめてみました。

2022年大学入試スケジュール

21年共通テスト時間割

上図は、8月1日現在の2022年度大学入試スケジュールです。共通テストの実施日程が1回だけになるなど、基本的にはコロナ禍以前の2020年度入試に準じたスケジュールに戻りましたが、下記の点が2020年度と異なる点です。

○追試験は、2021年度入試と同じく、新型コロナウイルス感染症への対応として本試験の2週間後の1月29日(土)・30日(日)に実施されます。実施会場は、2021年度入試のように全都道府県に1ヶ所以上設置するか、あるいは2020年度以前のように東京と関西の2会場設置とするかについては未決定です。
○個別(2次)試験出願期間を1月24日(月)~2月4日(金)と締切日を追試験受験者に配慮して遅らせました
○国公立大学の学校推薦型選抜の結果発表を2月15日(火)までに遅らせました。
○国公立大学の一般選抜の第1段階選抜結果発表日を前期は2月15日(火)まで、後期は3月3日(木)までに遅らせました。(※中期は変更ありません)
○国立大学の一般選抜の前期・後期個別試験の追試験日程を3月22日(火)からと定めました。

新型コロナウイルス感染症の拡大は、今後のワクチン接種の広まりとともに抑制されていくものと思われますので、ほぼ今回発表のスケジュールで実施されると思われます。しかし、未定の共通テスト追試験会場の設置方法などに加えて、今後の感染の状況の変化に応じて、さらに変更がある可能性もあります。ぜひ、文部科学省、大学入試センター、国立大学協会、公立大学協会および志望大学からの発表には十分に注意を払ってください。

系統別志望動向(第1回駿台全国模試)

第1回駿台全国模試系統別志望動向

上記の第1回駿台全国模試の系統別志望動向グラフは、国公立大学については各日程で第一志望とした大学の集計、私立大学については総志望(志望順位に関係なく志望している大学すべて)の集計をもとに、系統ごとの志望者数の増減について、2020年度模試の志望者数を100とした場合の2021年度模試の志望者数を指数で示したものです。なお、以下の文中の( )内の数値は2021年度模試における志望者指数を表しています。

全体集計では、国公立大学(103)はやや増加、私立大学(114)は増加です。私立大学の増加率が大きいのは、前年度のコロナ禍の中での模試においては、中高一貫校在籍生の割合が少なく、学校一斉休校の影響を大きく受けた私立大学専願層の受験者数が減少していた影響です。

■国公立大学
文系では、社会(109)が増加ですが、他の系統は減少しました。特に、コロナ禍により留学ができないといった海外渡航制限の影響を大きく受けている国際関係(78)、外国語(84)の2系統が大幅減少でした。これら以外の法(94)、経済・経営・商(97)はやや減少、人文科学(99)は前年度並で、コロナ禍による文系人気の低下は続いたものの、大きな減少には至りませんでした。

理系では、理(112)、工(108)は増加で、2021年度入試で見られた「理高文低」という動向がはっきりと継続しました。一方で、農・水産(100)は前年度並で、この系統への低い人気が好転する気配は見られませんでした。

メディカル系では、医(108)、薬(108)は増加で、保健衛生(77)、歯(82)は大幅減少と対照的でした。コロナ禍の中で献身的な医師の活動やワクチン、治療薬の研究への関心が高まり、2021年度入試に引き続いて医、薬への人気が高まりました。歯は医への志望を強く持つ受験生の増加の影響を受けて減少しました。今後、志望変更による流入が起きるかどうかに注意が必要です。保健衛生は大幅減少でしたが、今回の模試がハイレベル記述模試だったことの影響もあり、共通テスト重視の配点をとる大学も多いことから、今後の共通テスト型模試の動向も注視してください。

文理両方から志望できる系統では、総合科学(109)が増加でした。この系統に含まれるデータサイエンス系への人気の高さが影響しました。一方で、教員養成・教育(84)は大幅減少、スポーツ・健康(91)は減少でした。教員養成・教育は教育を取り巻く厳しい環境が、スポーツ・健康はオリンピック・パラリンピック後のこの系統への関心低下が影響しました。

■私立大学
先にも述べたように、私立大学は前年度受験しなかった層が戻ってきたことで、志望者数全体は前年度比14%増加しました。そこで、この私立大学全体の志望者指数114を基準として系統別動向を見ていくことにします。

全体的には国公立大学と同じような傾向でした。文系では、外国語(83)の大幅減少が目立ちました。系統への低い人気に加えて、摂南大・外国語が国際へ学部改組したことによる系統別集計の変更の影響もありました。国際関係(104)はこの改組や新設学部による集計募集単位の増加という追い風はありましたが、全体の志望者指数を10ポイントも下回っており、系統への低い人気が継続しました。一方で、人文社会(113)、法(112)はほぼ私立大全体に近い志望者指数でしたが、文系で全体を上回る志望者指数の系統はありませんでした。

理系では、理(127)、工(117)の大幅増加で、全体の志望者指数も上回りました。人気が高い情報系が引き続き増加しました。農・水産(105)は、全体の志望者指数を9ポイントも下回り、人気回復は見られませんでした。

メディカル系では、薬(116)、医(115)は全体の志望者指数とほぼ同じ増加でしたが、国公立大学ほどの増加は見られませんでした。2021年度入試でも見られた学費負担が重いことが影響しました。歯(111)は、国公立大学とは異なり全体の志望者指数に近い増加で、私立大学医学部医学科志望者の併願先としてやや弱気な志望動向が見られました。保健衛生(97)はやや減少ですが、国公立大学と同様に今回の模試がハイレベル記述模試だったことの影響もあり、今後の標準レベルの模試動向を注視してください。

文理両方から志望できる系統では、総合科学(138)の大幅増加が目立ちました。国公立大学同様にこの系統に含まれるデータサイエンス系への人気の高さが影響しました。一方で、教員養成・教育(118)も大幅増加しました。特に、待機児童問題などで関心が高い幼児教育系への人気の高さが影響しました。スポーツ・健康(85)は大幅減少で、国公立大学同様にオリンピック・パラリンピック後のこの系統への関心の低下が顕著に影響しました。