4月に入りましたが、コロナ禍は緊急事態宣言が解除されたものの、再度感染拡大が始まり、「まん延防止等重点措置」がいくつかのエリアで始まるなど、まだまだ予断は許されない状況が続いています。そんな中で水泳の池江璃花子選手の日本選手権での4冠達成や松山英樹選手の米ゴルフトーナメント・マスターズでの優勝など、スポーツ界での明るい話題もありました。お二人とも苦境の時期を乗り越えての優勝という素晴らしい成果でした。受験生の皆さんも合格を勝ち取るまでは、いろいろな困難やトラブルはあると思いますが、志望校のキャンパスに立つ日を思い描いて、日々の努力を続けてほしいと思います。

さて、「志望校選びのアドバイス」では、4月前半号で国公立大の2021年度一般選抜志願状況についての分析をお伝えいたしましたが、4月後半号ではこれに引き続いて私立大の2021年度一般選抜志願状況についてお伝えいたします。

なお、以下の文章での( )内の数値は前年度の志願者数を100とする指数を表しています。この数値が大きいほど増加率が高く、競争が厳しくなったことを示し、反対に小さいほど減少率が高く、競争が緩和したことを示しています。

全体概況

全体概況

上のグラフは、私立大一般選抜の延べ志願者数の推移を表したものです。

2020年度までは文部科学省の発表数値、2021年度は駿台が4月9日現在で志願者数が確定した募集単位を集計した私立大218大学の一般選抜(学校推薦型選抜・総合型選抜等の特別選抜入試を除く)の延べ志願者数をもとに推定した志願者数です。

駿台が4月9日現在で志願者数が確定した募集単位を集計した私立大218大学の一般選抜の延べ志願者数は、約275万人(86)で前年度より約14%減少しています。この数値から推定される最終的な全私立大の延べ志願者数は14年ぶりに減少した前年度から2年連続減少で、10%以上の減少が見込まれ、326万人前後になり、2017年度の志願者数を下回ると予想されます。

この志願者数減少の背景には、下記の4点の要因が考えられます。

(1)2020年度入試において、2021年度入試で予定されていた大規模な入試改革への不安(結果的には先送りとなったが、その発表時期が遅かった)があり、さらに入試時期から感染拡大が始まったコロナ禍への不安も加わり、かつてない弱気な出願となり、大学進学を決めた受験生が多く、予想を超える既卒受験生の大幅減少があった。

(2)継続するコロナ禍の影響により、経済環境の悪化に加えて、地方在住者の感染への不安や対面授業の再開が不透明なことによる都市部の大学への進学の敬遠などから、1人あたりの併願校数が減少した。

(3)センター試験に代わり導入された共通テストの出題内容・難易レベルへの不安から共通テスト利用方式の志願者数が減少した。

(4)コロナ禍による厳しい経済環境や海外渡航制限の影響を強く受けている外国語系、経済・経営・商学系、国際関係系といった文系の系統への人気が低下し、文系定員の占める割合が大きい私立大の志願者数減少が拡大した。

入試方式別志願者数 前年度対比指数

入試方式別志願者数 前年度対比指数

上のグラフは、私立大一般選抜の入試方式別の延べ志願者数の前年度対比指数の推移を表したものです。

2021年度入試を見ると、一般方式(84)が16%減少しているのに対して、共通テスト利用方式(92)は、前年度までのセンター試験利用方式と比較すると2年連続減少ですが、8%の減少に留まっています。しかし、これは早稲田大・政治経済、国際教養、スポーツ科学、青山学院大・経済除く、上智大などで多くの募集単位を一般方式から共通テスト併用方式に変更した影響が大きく、前年度から継続する募集単位のみの集計では(83)と一般方式よりも減少率は大きくなっています。 共通テスト実施前に出願を締め切った「事前出願」の募集単位では、センター試験から共通テストへの移行に伴い、出題形式の変化や難化予想に対する敬遠により、また共通テストの実施後に出願可能な「事後出願」の募集単位では私立大文系3教科型(国語、地歴・公民、英語)の平均点大幅ダウンにより、それぞれ志願者数が減少した影響によるものです。

系統別志願者数 前年度対比指数

系統別志願者数 前年度対比指数

上のグラフは、私立大一般選抜の系統別の延べ志願者数の前年度対比指数の過去2ヶ年を表したものです。

系統別では、全ての系統が減少しています。その中で、私立大全体指数86を3ポイント以上下回ったのは、外国語(80)、国際関係(82)、生活科学(82)、歯(78)、農・水産(81)、スポーツ・健康(79)の6系統です。 それぞれの減少要因は、外国語と国際関係はコロナ禍の影響による海外との交流制限等による勉学や将来への不安、生活科学は女子大の志願者数減少、歯は医からの志望変更の減少、農・水産は高校生が関心を持つ話題が少ないことによる系統への人気低下、スポーツ・健康はオリンピック・パラリンピック後の関心や人気の低下などです。

一方で、私立大全体指数86を3ポイント以上上回ったのは、芸術(89)、医(91)、理(95)の3系統です。特に、減少率が10%以下だった2系統の要因は、医は聖マリアンナ医科大(136)の後期日程の新規実施、東北医科薬科大・医(107)、近畿大・医(103)の増加などが要因です。理は理高文低の流れの中で、上智大・理工(機能創造理工)(物質生命理工)(情報理工)の合計が(126)の大幅増加、関西学院大・理も旧理工の理学系統の学科との比較で大幅増加(126)であることが影響しました。

模試合格判定ライングループ別志願状況

模試合格判定ライングループ別志願状況
Aグループ=③SB共通テスト模試B判定ライン65以上
Bグループ=③SB共通テスト模試B判定ライン60以上65未満
Cグループ=③SB共通テスト模試B判定ライン55以上60未満
Dグループ=③SB共通テスト模試B判定ライン50以上55未満
Eグループ=③SB共通テスト模試B判定ライン50未満

上のグラフは、第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試の合格判定ライン(B判定ライン)を基にして、学部単位(医学科は別集計)で5つのグループ(上位Aグループ~下位Eグループ)に分類し、各グループの志願者数合計の前年度対比指数を示したものです。

文理別では、文系(85)、理系(88)といずれも10%以上減少していますが、文系の減少率がわずかに大きくなっています。また、文理ともにDグループの減少率が最も大きくなっています。

文系では、Aグループ(90)からDグループ(77)に向かって減少率が大きくなっています。コロナ禍による経済状況の悪化により出願校数を絞る傾向がありますが、いわゆる安全校の絞込が見られます。近年の弱気な出願によって続いていたAグループからEグループに向かって、志願者指数がアップしていくという傾向は全く見られなくなりました。コロナ禍で経済状況が厳しくなる中で、受験校選定にあたって、合格可能性のみを重視したような安易な選択は減少しているようです。

一方で、理系もA・Bグループの減少よりもC・Dグループの減少が大きく、文系ほど極端ではありませんが、安全校の絞込の傾向は見られます。なお、Eグループは、唯一やや増加となっていますが、現時点ではまだ集計大学数が少なく、参考程度に見てほしいと思います。 私立大の入試状況を振り返ると、2021年度入試が大きなターニングポイントになった感じがします。果たして、2022年度入試ではこの流れが続くのでしょうか?2022年度入試動向については、今後の模試結果等をもとに、最新情報を提供していきますので、ぜひ参考にしてください。

新学期の慌ただしさも落ち着いて、じっくりと学習に専念できるようになったのではないでしょうか?ぜひ、1年間の学習のペースをしっかりと確立させて、前進してください。心から、応援しています。