前編では、親友・直樹とネットワークビジネスとの出合いについて触れました。

中編では、自身が商品を購入するだけでなく、「ディストリビューター」として商品販売をてがけるまでになってしまった親友を説得し、マインドコントロールがとけるまでの2か月間をお伝えします。

※記事内の人物名、商品名は仮名です。

ついにディストリビューターの道へ

9月、いよいよ直樹自身も商品流通を手掛ける「ディストリビューター」の道に踏み出します。

数千円の登録料を支払うほか、NDT(New Distributor Training)やSM(Sureless Meeting)といった研修・自己啓発のセミナー、月1のGM(グループミーティング)が発生します。GMは300~400人が参加する大規模なもので、グループ内の上級会員による成功体験などが語られているそうです。

「月に2回ぐらいは何かしらあった」と直樹は振り返ります。

そして11月、がんを患っていた母親にグリーンレーベルの摂取を勧めます。

「抗がん剤は効いていないし、食事もできないから栄養が偏っている。試しに飲んでみてほしい」と申し出た直樹に対し、母親は「そこまで思ってくれるなら…。ただ、飲むか飲まないかは判断させてほしい」と答えます。

「20人のリスト」

2017年2月、「知り合いにネットワークビジネスやっていることを伝える」課題が与えられます。具体的には20人のリストを作り、1人1人に話をしていく、というものです。

セミナーやミーティングで指導を受け、直樹は中学や高校、大学時代の友人などをリスト化します。

最初に話をしたのは高校時代の友人、丹羽でした。

丹羽は「自分だったらやらない」という話はしたものの、直樹にやめろ、と言うまでではありませんでした。次に話をした、同じく高校時代の友人・石川も同じ反応だったと言います。

3番手としていよいよ私に声がかかり、前編冒頭のシーンに戻ります。

サークルを装った勧誘活動に要注意!飲み会やイベントにひそむ「ネットワークビジネス」のワナ(前編)

「直樹公認(目の前にいます)で投稿します」

ネットワークビジネスに反対する理由を話しても、決まりきった答えしか返ってこない直樹に危機感を覚えた私は、中学時代からの友人11人で構成されているLINEグループに助けを求めます。

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中学卒業後も付き合いが続いている「親友グループ」ともいえるLINEグループ。
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直樹以外にもグリーンレーベルの説明会に参加した人が…。
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ネットワークビジネスに興味を持ち、主体的にセミナーに参加していた人も。

友人たちの真剣なメッセージに感謝する一方、思った以上にネットワークビジネスが身近な存在であることに驚きます。

そしてもう一つ驚いたのは「マインドコントロールの深さ」です。

直樹がグリーンレーベルという商品に手を出したのも、それでビジネスをしようとしているのも、一番の理由は「母親」のためです。

聞けばその母親が「馬鹿なことはやめなさい」と泣いて話をしてきたと言います。泣いて話をされたのは記憶にないぐらい、とも。それなのに直樹は「いつかは分かってくれる」と言います。母親よりグリーンレーベルを優先していることに気付きません。

私たちにとって素晴らしい親友、直樹を育ててくれたお母さんが置かれている状況に心が痛み、また人が弱っているところにつけ込むやり口に怒りを覚えた私は、全力で止めることを決意、一方で「2か月以内にやめないなら縁を切る」と宣言をします。

「ネットワークビジネスでなく、マルチと呼べ」

終電の時間まで話を続けたものの、やめると言ってもらうことはできず、その日は解散することになりました。その後も、時には3時間を超える電話などをして、説得を続けます。

「DHCやファンケルの方がよっぽど安いじゃないか」
「グリーンレーベルでググった?ねずみとか怪しいとか出てくるじゃん」

色々とツッコミをいれても、想定問答集が刷り込まれているため「効果が違う」「ちゃんとセミナーを受けていない人が書いている」などと言います。

それでも、少しでもマインドコントロールされた状態を解きたい私は、「せめて自分と話すときはネットワークビジネスではなく、世間的に認識されているマルチ(商法)と、直樹自身口にしてくれ」と伝えます。

最初はためらっていましたが、「俺がやろうと思っているマルチは…」と言ってくれたことに、光明を見出したことを覚えています。

またLINEグループのメッセージを見た直樹は、一旦「20人のリスト」は止め、きっかけになったフットサルに直樹を誘った梶川、幼稚園から付き合いのある佐藤と話をすることを決意します。

梶川は「そんなものをさせるためにフットサルに誘ったわけじゃない」と怒り、「斉藤(直樹をネットワークビジネスのグループ長に引き合わせた、実際の勧誘者)は絶対に許さない」と連絡手段を全て断つところを目の前で見せたと言います。

佐藤はグリーンレーベルのセミナーに参加した経験があったため、「例え自分が成功したとしても、勧誘した相手が上手くいかなかったときの責任を考えるとやるべきではないと思った」と、やらなかった理由を諭すように話してくれたそうです。

「友達に恵まれて良かったね。人生長いからこれからのことはゆっくり決めればいい」

2017年3月31日、直樹からLINEが来ました。

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「副業を始めようと思っていて」と切り出されてから約2か月、ついにネットワークビジネスを止める決断をしてくれました。

待ち望んだ連絡ですが、母親に伝えていないという点が引っかかります。直樹の説得にあたった理由の一つは、お母さんを救いたい気持ちだったので完全解決とは言えません。

その日の深夜、3時間近い電話で「お母さんに伝えてほしい」と力説。その11日後、ついに「母親にも話した」との連絡がきます。

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ついに完全解決を果たしました。

なぜ「やめる決断」ができたのか

「やめる決断」ができた理由を直樹に聞くと、以下の4つが大きかったと言います。

  1. 私たちへの信頼があったこと。
  2. その場で縁を切るような全否定ではなく、考える時間を持たせてくれたこと。
  3. グリーンレーベルのセミナーに参加した他の人(佐藤)の話を聞けたこと。
  4. 働き方を変えたいと思っていたのに、各種ミーティングへの強制参加感が強かったこと。

勝手にフェードアウトしてもやめられるようですが、グループ長・広瀬と斉藤に会う機会があったため2人に報告をすると、「周りに反対されても乗り越えた」というエピソードを聞かされたと言います。

しかし、やめると決めた直樹にとっては「マニュアル通りの返しだな」と思っただけだったそうです。

こうして直樹のマインドコントロールは解け、2か月間の戦いは終わりました。友情が続くことを嬉しく思うとともに、直樹のお母さんに少しだけ恩返しができたかな、と胸をなでおろしました。

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毎年末開催する「親友グループ」の忘年会。変わらぬ友情に乾杯!

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サークルを装った勧誘活動に要注意!飲み会やイベントにひそむ「ネットワークビジネス」のワナ(後編)に続きます。

もし身近な人がネットワークビジネスにはまりかけていたらどうすべきか、自身がはまらないよう何を心がけるべきかなど、近しい悩みをもつ方々の参考になればと、大学の恩師を取材してきました。ぜひご覧ください。